箱を開くと、中には前々から欲しい、欲しいとねだっていた携帯電話の姿があった。 色は、白。 丸みをおびていて女の子らしい携帯だった。 とりあえず使おうとして電源ボタンを長押しし、起動させた。
ひらり、と紙が私の手元に落ちた。 私は携帯を近くの机におき、紙を見た。 そこには、電話番号とメールアドレス。お父さんのかな、と自分なりに解釈をして、その番号を起動させた携帯電話にインプットさせ、電話をかけた。
プルル、と着信される音が耳元で鳴る。 5秒、10秒待ってお父さんは出た。
「お父さん、遅いよ!」
笑いを込めて言った言葉は、苦笑へと変化させられた。
「いや、お前の父親じゃねぇぞ。俺…」
聞いたことのあるような声。 なんだろう、この声は。
「あ、えっとすみません。間違え、ました…」 「まあ間違えは誰にでもあるもんだ!またかけてみればいいじゃねぇか!」
声の主は多分にこやかにうけこたえをしてくれた。
「ありがとうございます。確認してかけてみます」
そういって、通話を切った私はふぅ、とため息をついた。
聞いた、ことのある声だったなぁとおもいながらもう一度、紙に書かれた電話番号を確認し、かけた。
プルル、と2、3回聞いたらざわざわと人混みの音が聞こえた。
「えっと、奥村燐だ!誰だ!勝呂か?」 「っ!?」
奥村燐、という名前は知っていた。漫画やアニメなどの媒体でよく流れていたからだ。いやむしろ私は好きで読んでいるし、見てもいる。でもさすがに、アニメとか漫画のほうではないはずだ。そう、同性同名の奥村燐、って人かもしれない。 そういうふうに一人で解釈をし、声をかけようとする。
「あ、お父さんっていってた奴か!」
ははは、と笑われる。 まあそりゃそうか。先程間違えてかけてしまったし。
「また、間違えてんぞ!」 「紙に書いた奴そのまま打ったのに…アドレスは合ってるのかな」
彼に、その番号を読んでみろといわれ少しずつ読んでいった。全て読んでいくと、それ俺の番号だよ、と笑って彼はいった。
「お前のお父さん俺の番号間違えて書いたんじゃねぇの?」 「そうかな?後で確認してみる」
そうしとけ、と笑いながらいわれ私は少し安心した。
「ありがとうございます本当に。えっと、奥村くん」 「燐でいいぞ?まあ紙に書いてあるから、いつでも電話かければいいからよ!」
私はならじゃあまたね、と返し、電話を切った。
紙の裏には名前の電話番号とメールアドレス、と父親の字薄く書いてあったことに気付かなかった。
110823 |