気が付いたら私は秀吉に抱きしめられていた。私の曖昧な記憶力によるとひざ枕みたいなのをしてくれたような気がしないでもなかったような。
…二人して寝ていたみたいだった、時間は30分くらい経っていたようだが、問題はない。演劇のほうは耳を潜める分に既に終わっているみたいだった。

「秀吉、起きろ、秀吉」

秀吉を揺さぶり、寝起きを待つ。

「すき、じゃと、いうて」

誰。誰のことをすき?彼の寝言なのかはわかっている。でもなんかムカついた。ムカついたから綺麗な顔に傷つけてやろうかと思ったけど、役者は顔が大事だからよしておいた。代わりに頬を抓っておいた。痛いだろうに。眉間に少ししわがより、綺麗な顔が少し苦痛の表情を浮かべている。

「かーわい、食べちゃうぞ」

ふと、思い付いた漫画の台詞を呟いてしまった。確か、少女漫画で俺様な彼氏が寝ている彼女に言った言葉だったような。

「…ん?」
「あ、起きたか。おはよ」

ぼうっとした秀吉が可愛すぎて私は逆に抱きしめた。可愛いなあ。

「なっ、おぬし何やって…って熱はないのか!」
「あー、多分知恵熱辺りだと思う」

言いたくなかったなあと思いながら、抱きしめたまま。秀吉にも抱きしめられているままなので、互いを互いに抱きしめ合っているようだ。

「そうか。大事じゃのうてよかったわい」
「心配かけてすまんな…」

肩を叩かれ私は抱きしめるのをやめ、手を離した。さすがに帰らないと外が暗くなってしまう。

「秀吉、帰ろっか」
「そうじゃの」

あ、聞きたいことがあった、と思い出し私は口を開いた。

「秀吉の好きな人って誰なの?」

ただ気になっただけだった。寝言だったから、いないのかと思ってた。
でも答えない彼が気になって、私は彼を覗きこんだ。
彼の顔は真っ赤になっていて、所謂食べちゃうぞといえるような感じだった。


111215

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