一応女として学校には来ているが部活のときくらいはいいだろうと一人はめを外す。
「名前、転校したんじゃ…?」 「名前は親戚の名ですよ、私も同じ名前なのでよく一緒に振り向いてまして」
ははは、とわざとらしい笑みを浮かべる。騙すつもりはないんだけど、こればかりは仕方ない。許してくれ。
「では秀吉くんやろうか」 「わかっておる」
勿論、演技が完璧だと疑われるので途中台詞を忘れたり、少し躓いたりとあまり息が合わないように演技をする。そのことは秀吉にはいってあるので問題はない。
「…疲れたあ…、」 「そうじゃのう」
一旦休憩が入り、私はため息をついた。面倒だっていうか、なんというか、演技出来るのはいいんだけど、前みたいに完璧には出来ないしかっこいい男役でもない。ちょっと嫌だ。
「のう、ちと向こうで話さぬか?」 「大丈夫だよ?」
笑顔を見せ、彼の元を付いていった。
――――
「で、どうすっか…」 「どうしようもないじゃろう…」
前みたいに少し演技の評価を互いにし、私達は準備室の床に座っていた。
「言えない、よなあ…。多分感づいてる人もいるけど」 「そうじゃの、わしらだけの秘密かの?」
可愛い。でも二人だけの秘密ってなんだか恥ずかしいんだが、なんでだろう。演技では出来るけどこんな直接言われるとすっごい恥ずかしい。
「…そ、そうだな」 「顔、赤いぞ、熱でもあるのか?」
手が私の額へ向けられる。身動きが取れない。いつもだったら笑って平気だよって言うのに。あれ、視界がぐらって揺れる。 名前が呼ばれてるみたい。ああ、
私は意識を手放した。
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