俺は、秀吉と一緒に帰り自室へと急いだ。一応実家から通ってはいるが母親は仕事で忙しい。 母親にはこんな姿見られたくなかった。いつも男の格好で行っていた俺、がいきなり女の格好でいったら学校でおきたことがばれてしまって停学沙汰になりそうだった。母に無理を言って近所で演劇部があって一生懸命出来そうな所を選んだっていうのに…崩されてしまうのは今の俺にとって1番怖いことだった。 写真立てを見つつ、自分で作成したクッションを抱える。笑顔で写る秀吉の顔や慌ててるアキちゃんの顔。可愛いものが好きな私、可愛くなりたくなかった俺。
「…意味、わかんねぇよ…」
俺は一人呟き天井を仰いだ。 今日は有り難いことに金曜日。私はぐっ、と伸びをしてベッドへ倒れかかった。
…――気がつけば寝ていたようだった。 部屋の明かりはなく、外は暗い。リビング辺りからは光が煌々とついていて、夕飯のにおいもする。
私は考えていた。 母にありのままを話すか、ごまかすか。ごまかしてもすぐにばれるからこそありのままを話すべきか。
「わかんないし、どうにでもなれ…」
私は母の元へと降りていった。 夕飯を食べ、異質な雰囲気に母は気付いたのか、何かあったのかと問い掛けた。私はまだ悩んでいて、話すことが出来なかった。
「名前、知ってるわよ。あなたが男の子に襲われたこと」 「…っ!」 「西村先生が職場に電話かけてきたのよ。先生言ってたわ。退学、停学にはさせないで下さいって、あんな先生いたのね、私びっくりしちゃった」
笑顔を浮かべる母。私はまだあの学校にいていいんだろうか…。
「だから、そうさせないわ。あなたが自分で選んだとこでしょう」 「母さん…ありがと…」
母は私が選んだことを覚えていてくれたようだった。
「泣かないの、全く」
呆れ顔をし、私にティッシュを差し出す母。なんだか暖かくて、また涙がこぼれた。
「…、電話、どうしよう」
母との会話をし終え、お風呂に入りもう寝れる準備をして、ふと気付いた。彼に言っておこうかと、でも時間は11時くらい。多分平気だと信じているけど、どうだろうか。
「悩むの面倒くさくなってきた、かけてやる!」
私は携帯のボタンを押し、耳元に寄せた。プルル、と音が鳴り、「ちょっと待ってねー」と変にデフォルメされてる声が聞こえる。待て、これ誰の声だ。プチッ、と音が途切れ、秀吉の声が聞こえた。
「どうしたのじゃ?」 「私、Fクラスに移動するからっていう報告」 「…え、もう一度いって…」 「だからFクラスに移動する」
慌てているようだった。まあ当然か。
「女の子、としてFクラスに行く。今日みたいな格好でばれないよね?」 「まあ大丈夫じゃろう…」 「あと私、召喚獣の奴には参加出来ないから。他の人にばれたらまずいし」 「そうか…」
秀吉は私の話しを真剣に聞いてくれていた。それは私にとって嬉しいことであって、なんだか心地いいものであった。
笑顔なんて、
私は気付かなかったけれど、そのときの私は笑っていたらしかった…。
111022
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