ざわざわと騒がしい教室。何事かと思い耳をそばだてる。

「名前さんが…―」
「本当、残念だよね…」

女達から聞こえる名前は全てわしの知っている名前だった。

「姫路、どういうことかわかるかの?」

割合近くにいた姫路に問い掛ける。姫路は少し俯いて、残念でした、と答えた。

「どういうことじゃ?」
「木下君はすでにわかってると思ったんですけど…」

そういって姫路は名前が転校する、と言った。わしとしては名前が転校するとやっぱり嫌じゃった。部活であんなにも息が合うやつはいなかったし、それに…守ってやりたくなった―、ただの女の子だったんだ、強がってるだけで、ただの女の子だ、とわかったらなんだかいつも守られてるのはおかしい気がした。

「木下、君?」

心配そうにしてくれる姫路に、大丈夫と声をかけ部室へと向かう。今いないなら多分、ここにいるだろう。そんな気がした。

物音がして、やはりいるのかと思い扉を開けたら、女子制服を着た名前。いつもより少し違う印象を持つ。

「あ、木下君…」

わしに気付いているくせにあえて名字を呼ぶ。気付かれたくなかったのだろうか。でも、なんだか嫌だったから屁理屈を言って彼女に名前呼びさせた。
彼女は困っているようだった、いつもと雰囲気は違いただの女の子だった。

その姿をおかしいなんて、言えるはずもなかったんだ。



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