ざわざわと騒がしい教室。何事かと思い耳をそばだてる。
「名前さんが…―」 「本当、残念だよね…」
女達から聞こえる名前は全てわしの知っている名前だった。
「姫路、どういうことかわかるかの?」
割合近くにいた姫路に問い掛ける。姫路は少し俯いて、残念でした、と答えた。
「どういうことじゃ?」 「木下君はすでにわかってると思ったんですけど…」
そういって姫路は名前が転校する、と言った。わしとしては名前が転校するとやっぱり嫌じゃった。部活であんなにも息が合うやつはいなかったし、それに…守ってやりたくなった―、ただの女の子だったんだ、強がってるだけで、ただの女の子だ、とわかったらなんだかいつも守られてるのはおかしい気がした。
「木下、君?」
心配そうにしてくれる姫路に、大丈夫と声をかけ部室へと向かう。今いないなら多分、ここにいるだろう。そんな気がした。
物音がして、やはりいるのかと思い扉を開けたら、女子制服を着た名前。いつもより少し違う印象を持つ。
「あ、木下君…」
わしに気付いているくせにあえて名字を呼ぶ。気付かれたくなかったのだろうか。でも、なんだか嫌だったから屁理屈を言って彼女に名前呼びさせた。 彼女は困っているようだった、いつもと雰囲気は違いただの女の子だった。
その姿をおかしいなんて、言えるはずもなかったんだ。
111021
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