どうして、いたのか、って…勿論探したからに決まっておろうなんて臆病なわしは言えなかった。 姉上からの注文を終え(ちゃんと着替えた)、部室へと向かっている途中だった。
「き、木下くん、っ!」
走ってくる演劇部の人。名前はすまぬ、後程覚えておこう。
「どうしたのじゃ?」 「名前が、名前さんがいないの!」
わしの勘だが、名前は勝手に部活をサボる奴ではない。むしろ休むことなんてないに等しい。
「木下くん、知らない?」 「すまぬ…、探しておく…」
相手に謝り、踵を返す。 もしかしたら、と予測があった。あの目線、あの男。怪し過ぎた。わしを見る目は基本怪しいが(男の娘みたいな意味で)、あそこまで見つめられ怯えてるのはおかしかった。
そして体育館のほうへ向かい、名前を呼ぶ。近くでカタンとした物音と少しくぐもった声。その方向へと向かうと倉庫。鍵は閉まっていない。耳をあて、中を伺う。わしは中に入るじゃなく先生を呼ぶのが1番だと思ったのじゃった。
でも、名前が襲われてると思うといてもたってもいられず、扉を開け、怒ったのじゃった。 相手は気迫で感じとったじゃろうが、名前は演技だと思っておる。それを否定するのにはあまりにも簡単で否定出来なかった。
名前は女の子。そう思うくらいわしは男役の彼女を好いていたのかもしれん。 みんなから、わしと彼女は正反対と言われてきた。じゃが、別に悪いことじゃない。 寄り掛かった彼女をわしはゆっくりと抱きしめていた。
111015
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