「名字さん、…」

はあ、女の子不足だ。どうしよう。そんなことを考えながら窓から外を見る。

「やってんなあ…」
「名字さん…?」

声を掛けられていたことに気づき、振り向く。

「お、優子さんか…」

優子さんというのは秀吉の双子のお姉様。趣味がありとあう。絶対攻め、って聞いたら受けって答える。絶対。(ちなみに俺にそっちのけは全くない)

「名前呼んでも全く反応しないんだもの…」
「すまん、で何の用だ?」

優子さんはAクラスでものすごく頭がいい。敵うわけがないっていうね。恐ろしい。

「いや、秀吉借りていいかと聞こうとね」
「つまりあれか、また安易に受け入れたか」
「…そんな訳ないじゃない」

優しいのはいいことだが、苦手なら断ればいいのに。頭の良さは優子、演技や歌は秀吉。いい感じに真逆の双子だよな。

「構わないが…」
「よかった。じゃあ借りてくね」
「早めに返せよ」

ひらひらと手を振りまた外を眺める。俺に気付いた誰かが、手を振ってくる。女の子。可愛いな。
ぼぅっと考えていたらいつの間にか授業も終わっていて(寝てはいない)、部活にでも出るかと準備をし廊下に出たときだった。
ぞわっ、と下半身に嫌な感じ。いやまああれはついてない。なんというか痴漢に合ったことはないが、実際こんな感じなんだろう。気持ち悪い。

「名字名前、だな」
「あぁ…」
「ならば、くたばれ」

ピリッ、と何かを浴びせられ、俺はふらりと倒れた。
倒れた後は覚えていない。
気付いたら、どこかの倉庫の中に詰め込まれていて、手足には縄が。動けない。口元にもガムテープ。用意周到だな。

「名字、」

首を回すと俺が知らない顔がいた。同じ制服を着ているから同じらしいが。

「お前、女、だよな」

よく聞かれるが勿論女だ。
ふざけんな、それだけで俺を呼び付けたのか、部活あんだよこっちは。いらっとしたのが相手に伝わったのか、強行突破だな、と呟かれ制服に手がかけられた。

声が出ず、何か恐ろしい。
誰か助けてほしい。






110928

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