やはり私の勘があっていたようで、柔造兄ちゃんが迎えにきてくれていた。
「久しゅうなあ、名前」 「久しぶり、柔造兄ちゃん」
兄ちゃんは全くといっていいほど変わってなく、にこにこと笑顔を振り撒いていた。 まあ、その笑顔が偽なのはもちろん知ってはいるけども。
「そいや、名前」
兄ちゃんが真剣っぽい表情で、私の名前を呼んだ。 何事か、と思って何?、と聞き返したら本当に驚きの一言だった。
「廉造元気か?」 「は?」
は、ってなんや、全く名前はー、と兄ちゃんは笑っているが私には全くわからない。
「兄ちゃんどういうこと?」 「廉造も正十字学園通ってるってことやね」 「本当?」 「本当や。って名前顔怖いで、笑顔や、笑顔!」
そうなのか、いたのか。 いたならパシリもできたのに…。 んー…悔しいなあ。 兄ちゃんには、その顔がばれていたらしく、むにむにと顔を引っ張られた。
「いひゃい。にいひゃんいひゃい!」 「あはは、かんにんな」
笑う兄ちゃんは変わらないし、逆に怖い。私はよく怒られていた記憶しかない。虎子さんにも怒られてたけど、兄ちゃんすぐ怒るからなあ…。
「あ、ねこねこと坊もいるようやで」 「そうなの?知らなかった…」 「ついでに今日はほとんど来てるらしい。珍しいこともあるんやな」
京都の親戚は全部が全部揃うことがあまりない。 親戚、といっても血が繋がってない勝呂家や、三輪家も集まる宴会みたいなものだ。 ただの宴会ならいいけどあの坊主はセクハラするからたちが悪い。全く。強くは言えないけど内心は思ってる。ものすごく。
「あ、でも、坊と猫は来ないらしい。なんでも学校でなんかあるから、来られそうもないって言ってたわ」 「廉造は来るの?」 「まだ来てへんが、来させるさかい」
どういう意味、とは聞けなかった。あの表情怖い。 声をかけようと口を開いたら、もうついたで、と兄ちゃんは言った。 懐かしいこの家。 母さんも父さんも元気かな、酔い潰れてなきゃ、いいけど。 そう思いながら、玄関の扉を開いた、ら…いた。 人、いた。
「…き、金ちゃん?」
金髪に染め上げいる従兄弟がいた。むしろなんで玄関にいるのか意味わかんない。どういうことなの。 ちらり、と後ろにいた柔造兄ちゃんに目配せする。
「金造、金造…名前来たで、おきぃや」
うぅ、と唸り声を上げ、金ちゃんは起き上がる。
「久しゅうな、名前」 「久しぶり。金ちゃん出来上がってるね…顔真っ赤だ」
くすり、と笑うと金ちゃんはなわけなかろうが、と苦笑していた。
「そう言えば廉造まだ来てへんのか?」 「柔造がいってから誰も玄関通ってへんよ。俺いたし」
そっか、まだいないのか。 少し残念な気持ちになったのは気のせいにしておこう。
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