ふわぁ、と欠伸を漏らし体を上げた。
「…はぁ」
さすがに投げられて普通に過ごせませんよ、全く。
「おはよう名前ちゃん」 「ああ、折原さんですか。おはようございます」
それも朝からこの人に会うなんて…。
「折原さん、顔見せて下さい」 「は?」 「あ、ごめんなさい。目を見たいので、赤いですし」
変な発言だっただろうか。折原さんの目の奥を見てみたいのだ。赤い、瞳の奥。
「いい、けど、何の得にもならないよ」 「構いませんが」
ずぃっと折原さんの顔が私の顔近くに寄る。
「綺麗、ですよね、折原さん。嫉妬します…」
男だとは思えない綺麗な肌で白い。でもちゃんと良いところには筋肉が付いている。羨ましい限り。
「なら、失礼しますね」
私も折原さんに顔を近付け、瞳を除く。
「やっぱり綺麗、ですが…」 「ですが?」
寂しいんだ、この人は。だからなのか。そっか。だから私なんかをからかって遊んでいたのか。
「折原さん、寂しいんですか」 「なわけ…」 「嘘つきです、貴方は」
ああ、もう私は貴方の瞳に酔ってしまったみたいだ。 あんなに嫌いだったはずなのに、あんなに嫌がっていたはずなのに。
「やっぱり間違っていなかったよ」 「何が、ですか」
問い掛けても折原さんは答えてくれなかった。 茶髪君?みたいに近くて遠いものを見つけたい訳じゃない。帝?君みたいに何か一つを企んでいる訳じゃない。あの女の子みたいに仲良くしている子達に隠している訳じゃない。 あの子たちを足して割って、寂しいを足したらこうなると、思う。
「折原さん、私最初貴方に興味を持ったんです。多分あの投げた方もですが。話を聞いて面白いな、面白そうだなって、でも実際面白くなんかなかったんです。貴方と多分投げた方は寂しがり屋さんなんです。そうでしょう」
まだ顔は近い。でも彼の瞳を見ながら問い掛ける。
「…敵わないよ、全く」
瞳が揺れ動く。 そして、抱きしめられていた。 「折原、さん…?」 「ごめん、もう少しこのままで居させて」
貴方はこんなにも弱いのにそんなに強がって。
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