簡単に眼鏡くん、いやヒデノリくんの言葉を要約してみるとしよう。ちなみにまだ電話は続いていたりしている。やっちゃん何本気でやらかした。 とりあえず、タダくんいや空気くんには謝罪の言葉を送れと灸をすえておこうと思う。 鞄で人は殴っちゃいけませんって言っておかなきゃ。確かあの日は割合中が少なかったと思うけれど、未だ謝っていないのはさすがに駄目だろ、やっちゃん。
「で、ミカリン?聞いてる?」 「ああ、聞いておるぞ。話を続けるがよい」 「え、何それ。今日大丈夫か?」 「心配せずとも大丈夫だ」
ちょっといつもより声低めにして頑張ってみた。ふふ、どうだ。私の実力をなあ!なんて言える暇はないんだが。
「でさ、なんて言ったのさ。やっちゃんが吹き出すなんてそうそうないことだよ。やったね、眼鏡くんレアだよ!」 「嬉しくねぇよ。というか言わなきゃまずいのか?」
うん、まずいよ。なんて口が裂けても言えない。どうしよう。でもやっちゃんに聞いても何も答えてくれないだろうし。でも聞きたいし。
「まずくはないけど聞きたいなー…って」 「なら断る。ほとんど俺の恥さらしじゃねぇか」
ですよねー…!そうですよねー…!
「まああらかたくさい台詞というか中二くさい台詞をはこうとして失敗したんだろーな、という予測はあるけどね」 「な、なん…いや、なんでだ?」
眼鏡くんよ、もうばれておるぞ。なんでわかるんだ、と言いたかったけれどそれを言ったら墓穴を掘るからであろう…。まあ騙されておいてやろう!
「いや、ほらあの子と話すときにその中二くさい台詞をそのままそっくり私とかに言ってるからさ」
まあ事実であって、たまにサオリンも含まれる。
「え」 「ドンマイ、眼鏡くん。君に逃げ場はないさ!…まあ友達に連絡をしようとする場合には夜遅くに女子高校生と話しているという男子高校生にあるまじき行為を自ら暴露し大変なことがおこるかもだがな!」 「ミカリン、性格悪くなったか?」 「きのせー、きのせー」
はは、と笑いながら自分の台詞を思い出す。…ただの悪役じゃねぇか! そりゃ性格悪くなったかって尋ねられるよ。 バン、と自室の扉が開けられ、携帯電話を耳元にあてたまま振り返ると弟がいて。
「うっさい。黙れ。ねられねぇ。さっさと電話やめろ」
そういって、扉が閉められた。……ごめん。弟。
「眼鏡くん。ごめんなさい」 「何、ミカリン弟でもいるの?」 「まあいるけど…」 「声丸聞こえだったからさ。ごめんな。遅くまで」 「いや、それ私のせいだからさ。…じゃ、また明日?かな」 「そうだな。また明日。あ、気軽にメールとかしても平気か?」 「問題ナッシングっ!まあ友達がいるとこではあんまり返信出来ないかもだけどね!じゃあね!」
ぴっ、と電源ボタンを押し、通話を終わらせた。 まだ耳元で聞こえていた彼の声がどこかしら残っていて、ちょっと気持ち悪くなった。
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