やっちゃんは先日のことを謝らなきゃいけないの、と帰り道に少し慌てながら私に言った。
「先日のことって何?」 「えっ」 「どうせあの河原の男子高校生のことでしょ?ね、ミカリン?」 「いつの間にサオリンいたのさ」 「え、さっき?二人とも気付かないのが悪いのさ!」
サオリンはとりあえず置いておこう。今はやっちゃんだ。
「やっちゃんその話詳しく聞かせて、いや嫌なら私知り合いから全力で聞くけど?」
ちらり、と携帯を見せタダクニくんのを見せる。いやまあヒデノリくんの知ってるけどやっちゃん何しでかすかわからないから…とりあえずタダクニくんってことで。ちなみに名前は空気読んで。送り仮名はタダクニだ。だからちゃんとた行にいる。さすがだろ私。
「え、ちょ、それはだめ!言うから!!」 「わかればよろしい。じゃ、近所のファーストフードでも行きますか。サオリンは来なくていいよ」 「まあ私用事あるから行けないからいいけど。後で話聞かせなさいよ!」
サオリンはヒデノリくんをばらす可能性が高いからな。このまま黙って見ているのが二人にとっていや、私にとって面白いからいいだろう。
「で、何があったのさ。やっちゃん」
とりあえず、飲み物と簡単に食べられそうなものを注文し、座席に腰掛ける。
「この前、笑っちゃったの」 「まって、結論を先に言われても全くわからない」
やっちゃんは慌ててると結論を先に言っちゃうからね。何が自分にとって大切なのか、って。うん。
「で、何、どゆことなのさ、やっちゃん」 「あれは私がいつもみたいに河原を歩いていたらあの眼鏡の子がいて。あっ、見つけたって思って」 「それはどういう意味かね、やっちゃん」
ああもうやっちゃんかわいい。慌てすぎて自分の感情暴露しちゃってるよ。このままだとやっちゃんが可哀相だからとりあえずここで一旦切り上げて張本人に聞くことにしよう。 それまでやっちゃんはまだ謝るのは待って貰って。
「やっちゃん、もう話のきついならやめよっか。でもさ。なんていうかまとめてから謝ったほうがいいと思う。私はね」 「ミカリン…!」
やっちゃんはこくこくと首を縦に動かした。それから私はやっちゃんとたわいもない話をしてから別れたのだった。
「…まあヒデノリくんに聞くのが早いよな。とりあえず寝る前に電話かけよっと」
私はそう決めて、最寄り駅まで向かう電車へ乗り込んだのだった。
120306
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