ミカリン、サオリン、なんてただの偽名なんだけれど、偽名がないとダメになってしまった私は相当やつれてしまったのか、と思う。
「大丈夫、名前」 「多分。というか何処に行くのさ」 「内緒」
にこり、とサオリンこと、さおちゃん(あだ名)は私の肩を掴みゆっくりと先日文化祭に行った男子高に向かっていた。
「さおちゃん、なんで、…ここ」 「あんたが具合悪くなったのここが原因なんでしょ、メール私送ったけどあんたがあんな返信するとか気持ち悪いし」
先日文化祭時にメールが来たのはご存知であろうか。それはここにいるさおちゃんであり、私のメールはいつにもましてそっけなかった、とさおちゃんはいう。
「気のせいだよ、さおちゃん。私超元気」 「空元気出すのやめなさい」 「違うし、元気だし」
さおちゃんの目は何かを訴えていた。こんなこと言えないし、何もしたくない。家にも帰りたくない。だからこそ、私は今さおちゃんと一緒に男子高に向かっているのだけど。
「お、ヒデノリ発見。ヒデノリ!」 「おお、サオリンとミカリン…って大丈夫かミカリン?」 「んにゃ、眼鏡くんか元気よ、大丈夫よ!」
さおちゃんは私の口調に対し怪訝そうな顔を浮かべる。どうしたんだろう、さおちゃん…。
「ヒデノリ、ミカリン…いや名前を頼んで平気?ちなみに場所は既に用意してある」
いつの間にさおちゃんは眼鏡くんと仲良くなったんだろうか。でもまあ、いいか。友達が増えるのはいいことだ。
「…っ、え、ここっすか」 「何、入ったことないの?」 「さおちゃん、ラブホとかネタにならんからやめてな」 「わかってるって、ちゃんとした場所だよ」
さおちゃんは図星、みたいな顔をした。まあ仕方ないか。さおちゃんには彼氏さんいるから割引券とか貰ってくるんだろうし。いやでも実際のことはやってないっていってたような。私はそんなことには興味ないし。むしろ男の子というものが苦手な訳でして。まあ真田女子に入らなかった理由としては将来を考えた、といってもいいのかなあとは思うけどまあよくわからない。偏差値が足りないのも1つだし。
「じゃあここ」 「えっ、家じゃ」 「さおちゃん宅とか平気なの?」 「いや、ダメだけど」 「え?」 「ヒデノリ宅にいってらっしゃい名前」 「えっ、えっ」
どうしてこうなった。 さおちゃんはこの後彼氏さんがくるかなんかで待ってるという。大学生だっけさおちゃんの彼氏さん。わすれちゃった。
「ミカリン、行くか」 「あー、ヒデノリくんよ。私の名前言っとく一応ね。名字名前。名前呼び捨てで構わないよ、もういいや」 「名前荒れてるな」
苦笑するヒデノリくんを見て、ああこんな奴いたんだっけかと私はぼんやりと思った。
120217
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