会長を見ていて、といわれたが何をすればいいんだ。
「会長さん、ねぇ」
所々殴られた後があるが気にしたら負けだろうか。すごく気になる。
「…グーの形が小さすぎるな…女の子にでも殴られたのか、いやいやそれはないでしょう」 「正解ーっと、えーっと名字さん」 「そう呼ぶな。ミカリンと呼べ。というか起きてたのか」 「まあ、そういうことですかね」
食えない男だ。まあだからこそ生徒会長なんて面倒なことでもやっているんだろう。
「というか、なんでミカリンってあだ名を自分で名乗っているんですか、俺は今そこが疑問なんですよ。あだ名っていうのは他人、あ、いや友人が付けるものでしょう、名前にちゃんや、たんなんて変な語尾をつけて。でもあなたはなんでその名前を使っているんですか、偽名、なんですよね。知ってますよ、有名ですから一部でね」
前言撤回。最低最悪だ。なんだよ、悪いかよ。いいじゃねぇかよ。……落ち着け、私。最後までばれた訳じゃない。そうこれは私に鎌をかけただけだ。そうだ。
「会長さん、話、戻しますけど、その傷、どうなさいました」
「ああ、これ?りんごちゃんに殴られたんですよ」 「………修羅場…」 「いや違うから」
りんごちゃん、という方はご存知ないが、端から聞けばただの修羅場だぞ会長さんよ。
「りんごちゃんっていうのは今回共同で文化祭をしてくれた女子高の生徒会長。ちょっと、いやかなりおかしい子かなー、まあ俺は女の子を殴らない主義だから反撃しなかった…」 「女の子って怖いですよね」 「そーなんだよ!何あの本気!気違いすぎるっていってもおかしくない!」
会長さんひーとあっぷ。まあ確かに愚痴りたくもなるか。女の子に負けたんだものね。ざまあ。でもまあ敗因というか原因は、この会長さんの話し方というかなんというか、うざい。そしてムカつく。今なら私も殴れる気がする。
「ま、ミカリンちゃんも楽しんでもらえたようだし、いっか。あ、もう少しで副会長来るな、狸寝入りでもしてるか」
そういって布団に潜る会長さん。バレバレなんですけど。いやだって副会長さんカーテンごしにいますからね。阿呆ですか。 カーテンを開けられ、会釈をされた。私も会釈を返し、保健室の扉に立っている人がいた。あ、眼鏡くんだ。
「お手間をおかけして申し訳ない。夜ももう遅いので気をつけて帰って下さい」 「あ、はい…」
簡単に荷物をまとめ(ちなみに携帯と財布くらいのものしかサブバックに入ってない)、メールを確認すると友人から。中身を見て、少し微笑むと眼鏡くんは怪訝な顔をして私に近付いてきた。
「今日は悪かったな、俺のせいで」 「あー、うん。ちなみに思い出させないで」
しゅん、と落ち込む眼鏡くんに、帰るんでしょ、と声をかけ、私は保健室から出た。
「ヒデノリくんよ、アドレス交換しないかい?」 「えっ名前、あ、おう、」
ポケットから携帯を出し、赤外線通信。うん。二人目。
「二人目げっとー、ありがと、眼鏡くん」 「一人目って誰?」 「帽子くんだよ」
そういうと顔をしかめる眼鏡くん。私変なこといったか? 薄暗い廊下をスリッパの音が響く。ぱたん、ぺたん、ぱたん。
「タダクニとか呼んでくる、ちょっと外で待ってろ」 「はーい」
玄関につき、靴をはきかえる。…スリッパどうしようか。近くに段ボールがあったので、開けてみると多分スリッパの山。私はその中にスリッパをいれ、玄関前で眼鏡くんたちを待っていた。
120212
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