お医者さんは嘘をつく。嘘つきだ。そんなこと誰が信じるか。
「嘘つきだ、看護師さんもお医者さんも嫌い」
私は初めて検温を拒否した。酸素なんて知らない。 どうせ、私は、私なんか。
「いやだ!もう!いやなの!!」
何も変わらないなんて知ってる。怒りに任せてやったって変わらない。そんなことなんてわかってる。でも、でも、今の私には。
「名前、どうした?」
「!」
ミツオくんがきた。ああ、もうミツオくんもどうせ、どうせ!!
「来ないで!」
「どう、したんだ名前?そうだ今日面白い話あるんだ!」
「そんなのどうだっていいから!もう!来ないで!!」
ああ、ミツオくんに怒ったってなんの意味もない。
彼はなんの罪なんかなくて、でも私のことを普通に心配してくれる。でも。今は。
「?よくわかんないけど今日はもう帰るな?また来週、名前」
彼は何も悪くない。悪いのは、悪いのは…なに。
俺が彼女の部屋からでていくと看護師さんがゆるく微笑んで、また名前ちゃんと楽しい話してあげてね、と言ったから、俺は頷いて病院から出ていく。さて、来週の話題が沢山出来た。彼女は笑ってくれるだろうか。
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怒り