もじ | ナノ
※テニプリのひょうてーのほうの忍足くん


眼鏡、というものは視力矯正のためにあると私は思うのだが、甘い雰囲気を醸し出しているこいつは違うらしく、伊達眼鏡をくいっと持ち上げた。

「なんで丸をチョイスしたんだろうなあ…」

きゃあきゃあと騒ぐ女の子の声で私の失礼極まりない呟きは消される。こういうときだけ感謝多謝。ちなみに言うとしたなら棒読み。普段もうるさいので礼は言わない。むしろむかつく。授業の合間、所謂移動教室に移動するときに使ってねタイムを私は睡眠に当てたいのだが、忍足くんがいるせいで…いやまあ忍足くんだけのせいではないんだろうけれど、女の子が集まり「さっきの授業わかった?私全然わかんなかったのぉ」と語尾を伸ばしハートマークを飛ばすのが自分の女子の大半。授業わからないとか言っても義務教育だから、どう足掻いても卒業出来ますよとか思う私は如何なものか。
考えを戻すとしよう。
そう、彼は伊達眼鏡なのだ。それを聞いた瞬間私は眼鏡に指紋を付けてやろうかと眼鏡の人におもいっきり喧嘩を売り飛ばす簡単な方法をしてやろうかと思った、が周りが周り。近付けやしない。私が何故こんなにもいらついている理由としては、伊達眼鏡が許せないという簡単な理由である。私は小さい頃から眼鏡で、眼鏡をかけていない人が羨ましい。ちなみにコンタクトを入れる予定はまだない。怖い。だからこそ、眼がいいくせに伊達眼鏡なんかをかけている彼が許せないのだ、個人的に、だけど。

授業を受け、チャイムが鳴り、昼休みになった。ちなみにさっきの時間はグループワークなるものだったので私はただただどうしてやろうかと考えていた。周りからしてみれば最悪である。
弁当を取り出し、図書館へ向かう。蔵書も多い図書館は静かで好きなものが読み放題ということで私はほぼ毎日通っている。図書委員にもなれたし。
図書館の扉を開き、司書さんに挨拶してご飯を食べられるスペースでご飯を食べる。静かでとてもいい。教室とは大違いだ。

「ごちそうさまでした」

両手を合わせて、言葉を発し弁当とセットにしている歯ブラシと歯磨き粉を取り出し水道で歯磨きをする。図書館に水道があってよかった。これだけはあの俺様何様跡部様的な超絶ナルシストにお礼を言おうと思う。
歯磨きを終え、ご飯スペースを出るとカウンターに来る人がいてタイミングいいなあと思いながら、貸し出し手続きをする。

「なあ、」

声をかけられ上を見上げると、伊達丸眼鏡くん…いや、忍足くんがいた。

「なんですか」
「このシリーズの続きはないん?」

このシリーズ、と聞いて私が今持っている本を見るとまさかの恋愛小説でなんだかキャラに不釣り合いだと思い口許が緩んだ。

「…何にやけとるん?」
「っ、い、いや、なんでもないっです…っ」

笑いたいが、笑っちゃいけない。だめだ。だめだよ私。そう思いカチカチと蔵書確認のボタンをクリックすると【お探しの本はありません】と出てきて、可哀相にと意味のわからない同情心が生まれた。

「…あー、なさそうですね」
「さよか、ほんならええや。おおきに」
「いや仕事なんで…ってえ」

私が彼の借りた本を持ったまま、彼は図書館から出ていった。おいおい、待てよ…これ渡さなきゃじゃん…。やだなあ、と思いながら司書さんに状況説明するといってらっしゃいという返事があったので、私は図書館から出て行って彼を探すことにした。
図書館への道のりのルートはほぼ決まっているのでおそらく延長線上にいると思いたい。
廊下は走るな、というポスターを横目で見つつごめんなさい!という心境で廊下を駆け出し、丸眼鏡の雰囲気を見つけた。

「おし、た、り、くん」

彼は振り向きもせず、すたすたと歩いて行く。ファンだと思った、ということか。失礼極まりないなあ…。

「伊達丸眼鏡であんまり似合ってない忍足くん!」

ほぼ悪口である。ファンだと思われイラッとしたら口が滑ってしまった。

「なんや黙って聞いてりゃ…、」
「はい、本。忘れ物」

怒られたくないので、駆け寄って彼に本を渡すために手を伸ばした。

「え、あ、おおきに、ってそんなわけあるか!」
「…で、ですよねー」

本は取ってくれないのだろうか、というか見えてないのだろうか。私腕痛いんですけど。帰宅部になんか入らなきゃよかったかなあ。
忍足くんはまだ私に説教をしていてイラッときたので私は彼の伊達眼鏡に本を持っていないほうの手でべっとりと指紋をつけた。もっと怒られたとしてもいいや。もうめんどくさい。というか図書館に弁当おいてきちゃった。あーあ、最悪。

伊達なら別に

(忍足くん、説教はいいから早く本取って。)
(ん、)
(じゃあ、私図書委員なんで)
(逃げるんか?)
(自分の仕事を終えてないので。説教はまた今度)

そういって昼休みを終え教室に戻ったら彼は私の席に座っていて、意地の悪そうな顔を見せた。




120810
特に意味はない話。
伊達丸眼鏡、どうしてそのチョイスだったのだろうか。最近はもう違和感がない自分が怖い



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