もじ | ナノ
ちらり、とテニス部のコートのほうを見遣るときゃあきゃあと黄色い歓声(まあ声に黄色とか色はないけれど)、が凄く響いていて私は耳を塞ぎたくなった。むしろ耳栓持ってくるべきだった…。
そしてそんな黄色い歓声を上げている彼女らはタオルかペットボトル、そしてラッピングが綺麗にしてある紙袋を持って手をぶんぶんと勢いよく振っていた。しかし暑いだろうに。
時期的に、日焼け止め半端なく塗ってるなあと彼女らのほうから漂ってくるお菓子の甘いにおいと日焼け止め特有のにおいがして気持ち悪くなった。
熱中症おきなきゃいいけど。
私はコート外、というより歓声を上げている彼女らの数メートル後ろにある石に腰掛けて、タオルで汗を拭い、スポーツドリンクをこくり、と飲む。ちなみにちゃんと日陰な場所を選んだので、通る風が気持ちいい。

「ざいぜんくーん!「しらいしくん!」したりくん!」

声がぐちゃぐちゃに混ざって、誰を呼んでるんだかわかりませんよ、と失笑した。
忍足くんなんて途切れて「したりくん」だし。

何故私がここにいるかというと、有名人である財前光、というやつの誕生日ということを聞いたからだった。私はつい、同じ学校の人の誕生日を祝う癖がある。だから、私は今ここにいる。学年は別で知らないとは思うけれど(白石くんは除く)、祝いたい欲求はある。だからこそ私はプレゼントなんてものは作らないし、言葉のプレゼントだけで十分だと思った。所謂言魂(ことだま)みたいなものだろう。
そしてその当の本人財前くんはものすごく、眉を潜め、きゃあきゃあと声を上げている女子を見遣り溜息をついた。

「ん、あ、名字さんやんか…どうした…ってああ、誕生日か」
「うん。白石くんも祝ったもんね。女の子怖かったけど」
「堪忍な」

失笑してても笑い方かっこいい。そりゃモテるはずだわ、なんて馬鹿みたいなことを考える、まあ正しいけどさ。

「あ、じゃあ財前くん呼んできてよ、白石くん。飲みかけジュース上げるから」
「それはいらん。後でなんか奢れや」
「りょーかい」

白石くんに呼んで貰えば財前くんは確実に来るだろう。



言葉しか伝えられない
(財前くん、誕生日おめでとう。そのままの君でいてね)
(部長なんなんスかこいつ)
(誕生日祝い隊の隊長や)
(白石くんなにそれかっこいい)



120722
財前くんごめんなさい
愛はつめた。


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