もじ | ナノ
割合小さい頃、私は羽原さんを師匠と呼んで、羽原さんも羽原さんで私のことを弟子みたいな感じで接していてくれた。
あの事件が起こるまでは…。

羽原さんは別名アークデーモンと呼ばれるいじめっ子だった。まあいじめは大層ひどいものだったのだけど。思い出すとよくあんなことやっていたな私、と思うのだ。
事件というのは羽原さん、いや師匠の隣に住む唐沢としゆきくんに師匠が消えない傷をつけた、ということだ。
そしてその師匠が傷をつけた、と聞いて一目みてみようと思い、病院に行ってみたのだった。その彼はその額に出来た傷を大層嫌がっていて隠していたのだが、私はその彼に一目惚れしてしまったのだ。理由はわからないけれど、一目惚れしてしまった。
いじめっ子となる私だったのでまずいと思い、まず私はゆっくり師匠から離れていった。師匠は最初は一人で行っていたので、気付くことなかった。今聞けば、どうなのだかわからないけど。
帽子を被っている彼を見つける。前から変わっていない。自分の額の傷を隠すところ。

「唐沢くん、」

私は彼の名前を呼ぶ。

これから、私の初恋は歩みを初めて行くのだ。
ごめんなさい、勇気がなくて。でも今なら言える気がするの、

「一目惚れしました、好きです」

そんなこと、迷惑かもしれないけれど。
言った後に彼を見ると顔を赤くしながら帽子を弄っていて、私も恥ずかしくなってしまった。

彼の帽子由来



120229

続くよ


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