もじ | ナノ
※勝手に隣人設定
ちなみに一個前の続き




あー、やっちまった。

家に帰ったらあのバ、いや母親が名前ちゃん来てるわよ、なんて言ったから自室に上がるのが躊躇われたけど、荷物を自室に運ばなきゃいけなかったから荷物を自室に運んだら、まさか俺のベッドで名前がねていて(制服で)、いや本当びっくりした。布団かければいいのに布団をかけていなくってそのまま俺の枕を使ってすぴすぴ呑気に夢の旅に行っている。やめてくれよ、俺の気も知らないで…今日このベッドで寝られなくなるじゃねぇか。いやでも寝るけど。…変態くさいかな、俺。
そんなこと知らない名前は気持ちよさそうに寝ていて、つい出来心で髪を撫でた。さらさらと流れる髪は俺のごわごわしているのと違い、なんだかちょっと羨ましくなった。まあ男がさらさらとか気持ち悪いか。
髪を撫でているとシャンプーだかの甘いにおいがして、ああ女がいるのか、と実感した。

「このままだとやべぇな、俺…」

家の中で告白なんて、そんな親にばれることなんてしたくない。だからこそ俺はリビングへ降り立ったのだった。
俺の母親が名前を起こしに行ったら全力で寝起きの名前がいて、(目がまだとろんとしてた)そして前髪がぴょんと跳ねていてああ、こういう奴だったわ、と一人ため息をつき、寝癖を指摘した。ああ、もう俺も素直じゃねぇな。

「おばさん、洗面所借りるね!」

一人で直せる訳ないのにあの寝癖…。俺はゆっくりと洗面所へ向かい、名前の寝癖を直していった。鏡を見遣ると名前は真っ赤でそんな顔を見たら俺も緊張して、ああもう俺はダメだな、と一人心の中でため息をつく。そして名前が来た理由を聞き、少し寝癖が落ち着いた所でそのことを話す。実際俺のほうが身長は高いし、彼女の前髪は濡れてるし、頬も真っ赤に染まっている。ここで言わなきゃ男じゃないな、と思ったら、彼女が俺の母親がいるということをぽつりと呟いたので、ここじゃダメだったと思って、学校へ呼出したのはよかった。そう、ここまでは。

「男子高だからな、ここ…」

部活用のかばんを背負い校門前へ行くと男子に囲まれている名前がいた。まあ珍しいからな。

「ミツオくん、いた!」

そいつらを無視するかのように俺のほうへ寄ってくる彼女。他の奴らの目線が痛い。

「部活、行くんでしょ?」
「ああ、まあな」
「それを聞いて安心した。じゃあ私帰るかな」
「え、」
「ダメだった?」
「……部活、見てけよ。俺レギュラーなんだ」
「レギュラーなのは知ってるけど…学校に入って平気かな?」

帰らす気なんて全くなかった。むしろ一緒に帰る気だった。そんなことも気付かないのかこいつは。

「大丈夫だろ、校舎内じゃないから」
「そっか、じゃあお邪魔します」

にこり、と微笑んで、校門に一歩。なんだかやり遂げた!そんな顔をして俺の手を引っ張る。

「部活、行くんでしょ?」
「ああ」

その手をぎゅ、と握り、俺は校庭へと向かって行った。そのとき互いの顔は見ていなかったがおそらく俺の顔は真っ赤だっただろう。


部活をやり終え、名前からタオルとスポーツドリンクを受け取る。ちゃんと持ってきてくれたのか、と少し嬉しくなった。

「ミツオくん、早く帰ろ。外暗くなっちゃったし」
「おう、着替えてくるからちょっと待ってろ」

部活の用具は重いしくさい。まあ汗くさいのは仕方ないけれど、ちょっとあいつの前だとかっこつけたい俺がいる。

「お先にー」
「おう、彼女さんとちゃんと送れよー」

先輩にそんなことを言われ、まだ彼女じゃねぇけどなと一人心の中で悪態をつく。彼女にしたいけどな。

「名前、帰るぞ」
「うん。しかしミツオくんがラグビー…かっこよかったよ!ラグビーってあんなに激しいスポーツなんだね」

彼女は生き生きとした表情で俺がかっこよかったことを語る。恥ずかしいなこれ。
家の近くまで来たときに俺は歩みを止めた。名前はそれを見て俺と同じ場所に立ち止まる。

「ミツオくん、どうしたの?」

「名前、俺な…お前のことずっと好きだったんだ」
「え、あ、えっ」

驚いている表情を浮かべていると思われる彼女。夕方なので、表情が見えない。まあそれのほうが真っ赤になってるの見られずにすむか。

「付き合って、くれないか?」

「ミツオ、くん、えと、あの、その」
「返事は考えてからでいい。よし、じゃあ帰るか」

躊躇っている彼女の手を引き、家の前まで送る。隣人っていいよな。最後まで送られる。

「じゃあな、」

手を振り、自分の家のほうへ向かおうとすると名前が呼ばれて、何事かと思い振り返ると名前がいて、そして俺の制服の裾掴んでやがる。

「ミツオくん、えとあの私ね。ミツオくんのこと昨日寝癖直して貰ったときに気付いたんだけどね」

ゆっくりと語られる彼女の声。俺は彼女の掴んでいた服の裾をそっと外し、彼女の目を見る。家の街灯で照らされてお互いの顔がよく見えた。

「ミツオくん、私ね。もしかしたらミツオくんのこと好きなのかもしれない」
「かもしれない、か」
「うん、曖昧でごめんね」
「いや、いい。それが本音だろ?」
「うん」
「なら、本気で惚れさすから覚悟しとけよ。ちなみに惚れたらお前から告白な」
「えっ、え、ミツオくん!」

にまり、と笑い俺は家へとまた彼女を送る。

「ほら、帰れ。おばさん待ってるんだろ」
「うん」

彼女が、玄関まで入るのを見届けてから俺は家へ帰ったのだった。

…やってしまった。

ちなみに彼女からの告白は、一週間後のベランダからだった。
真っ赤になって一生懸命伝えてくれようとした名前の顔を忘れる訳はなかった。





120217




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