※勝手に隣人設定
ミツオくんがサッカーをやめ、ラグビーに入った、ということを母から聞き(ちなみにミツオくんの母と私の母はすごく仲がいい。気持ち悪いくらいに)、私はすごく驚いた。あとで理由を問い詰めねば、と思うくらい驚いたのだ。
ピンポーン、と間の抜けたチャイムの音がなり、ミツオ母にご挨拶し、勝手にミツオくんの部屋へ上がる。まあこういう間柄ですから。
「ミツオくん遅いな、」
ラグビー部のレギュラーだから厳しいんだろうなあ、と思いながら、私は彼の布団というかベッドで突っ伏していた。眠いし、寝ちゃおう。ミツオくんらしきにおいするし、あれ私変態くさい。まあいいか、眠い。
目が覚めたのはミツオ母に起こされたからだった。私すごく寝てたなおい。なんて思いながら、ミツオ家リビングに行くとミツオくんが既にいて私どれだけ寝ていたんだ、と恥ずかしくなった。
「制服で寝る奴があるか、」
「ごめん、つい眠くて」
むすっ、とした顔を浮かべられちょっと反省。やってしまった。
「俺のほうが疲れてるっていうのに」
「ラグビーだっけ」
「そうだけど、お前に言ったか?」
「お母様情報」
「ちくしょう、言ったのかよ、あの……母親」
「今、ババアって言おうとしたけど近くにいるから言い直したでしょ」
「そんな訳ねぇよ」
「はいはい」
うん、こんな感じだったよね。ミツオくんって。結構いい子なんだよな、努力家ですし。
「でさ、なんでラグビーにしたの?」
「それ聞いて何になるんだ…?」
「むしろ私はそれを聞きに来たらミツオくんのベッドで寝ていたんだが?」
「まじかよ…、名前前髪寝癖ついてるぞ」
「えっ早く言って!」
ミツオ母に了承を得て、洗面所へ。うわ、これやばい。超跳ねてる。
「水使って直せば?」
「直すよ!というかなんでミツオくんこっち来た、え?」
私の跳ねてる前髪を抑えて、蛇口を捻り髪に水を振り掛け撫でる。そんな私の中で普通の行為だったそんなことがミツオくんにしてもらっている。頭で理解するとかあ、と頬が熱くなった気がして、目の前の鏡を見ると真っ赤になった私がいて、それをまた見た私はもっと真っ赤になって、ああもう恥ずかしい。ミツオくんにばれませんように。
「名前、顔真っ赤だけど熱でもある?」
「ない、けど。多分」
「すまんな、水かけてたから、でこの方湿ってて熱いかわかんねぇや」
いやむしろなんでミツオくんがこんなことを私にやってるのかが謎なんだけど。ミツオくん、どうして!
「うし、出来た」
抑えられていた手が離れその体温の暖かさが少しおでこに残る。
「でさ、なんでサッカー辞めてラグビーにしたかっていうとさ、」
え、今ここでその話するの。
「帰宅部の友人が俺の必殺シュートをことごとく取りやがって、」
だから今ここで話すはなしなの。
「で、なんかいらっとしてそいつに当たったらラグビー部の先生に捕まったんだよな、っーのが話。理解出来たか」
「あ、うん。一応」
「あとさ、名前」
「何?」
真剣な表情で私の顔を見るミツオくん。何、なんなの。
「あ、おばさん…」
「えっ」
洗面所のほうから少し離れて見ているミツオ母がいた。え、なんでそんなにやにやしてるの、え。
「……話したいことあるからさ、明日の放課後学校来てくれねぇか?あとタオルとスポーツドリンク持ってきてくれ」
「パシリ?」
「ちげぇよ、ほら、帰るんだろ。送る」
くるり、と体を反転させ、私の手首を握ってきた。手、繋いでくれたっていいのに。
「送ってくる」
「お、お邪魔しました!」
荷物はなく身一つで来た私は、ミツオくんに引っ張られながらも家へ帰ったのだった。
120217
地味に続く