「いっつも気になってんだけどさ」
「何?」
「帽子の中って何入ってるの?」
「頭が入ってるが」
「いやそうじゃなくてさ」
帰り道、である。久しぶりに唐沢に会ったから、防犯のついでに一緒に帰ってもらっている。うん、いい奴だ。
「いっつも帽子被ってるじゃん」
私がいつ見ても、帽子を被ってる唐沢はなんだかおかしいように見えるが、中身は普通、というか真面目だ。生徒会入ってるし。
「…気にするな」
「いや、無理、ほら早くその手どけろ」
ちらり、と帽子を見遣ると唐沢自身の手で帽子が押さえ付けられていた。
「無理だな」
「………どけろ、」
「無理」
――――…この問がいつまで続くんだろうか。数分は確実にたっている。こっちから折れる振りして帽子をとったほうがいいのか。うん、そうしよう。
「唐沢、いいよもう、諦めた」
「そうか」
「なーんて…「名字家着いたぞ」あ、うん。ありがと。ここまで」
今のタイミング何!確実狙ってたよね!
「どういたしまして。じゃ、またな」
「あ、うん…」
ちなみに彼の家は隣の隣である。
……ああ、また帽子とれなかった…。
帽子って
120206