もじ | ナノ
彼は、凄かったんだ。でも一人で戦っていた。


彼の部屋に飾ってある旗の下のもとで。
「ねぇ、プロイセン」
私は彼を呼んだ。

   ***

あいつは俺を読んでからどもったというよりも黙ってしまった。
なんなんだ、いったい。
こいつは昔からこんな奴だった。
戦っていたときも肝心のことは一個もいいやしねぇ。
でも逆に名前だけを呼ぶ。
さっきみたいに。
だから仕返しとして彼女の名を呼んだ。

   ***

「名前」と彼が私の名前を呼んだ。
私はプロイセンみたいに器用な奴じゃないから、何をしたいのかがわからない。
「なぁに、プロイセン」
「いや、なんでもねぇよ。名前」
「なんでもなくて呼ぶわけがないでしょうが」
「いや、実は…俺様日記で名字という名前があったんだ。それってお前のことだよな…?」
なんということ!?
私の名字を覚えていないなんて!!
昔っから私は彼のことを見ていたのに、なんでなの。
彼の名前がギルベルト・バイルシュミットということも、実はこの国(プロイセン)だということも知っているのに。
嗚呼、なんということでしょう。
愛しのあの人は私の名前すら憶えていないなんて!!

   ***

…失敗したな。軽くトリップしている名前を見てそう思った。
フランシスがいっていた。
「自分の言葉で百面相していたらショック受けてるから注意しろよ、とくに名前ちゃん」
何処が悪かったのだろうか。
嗚呼、愛しのこいつは俺の気持ちすら考えてないで!!

   ***

ショックを受けすぎた。ちらりと彼を見ると彼も自己批判に陥っていた。
ふと、思い出した。「俺様日記で〜」…私の名前が載っていたという日記。
見てみたい。多分、あのコトしか載ってないんだろうな。彼は戦いしか考えていなかったから。
彼に気づかれないようにそっと彼の本棚に近づいて動かしてある日記を見た。
[○月×日
今日も俺様はかっこよかった。・・・・・(何処がかっこよかったかの下りは飛ばした)
あと今日名前名字という可愛い女の子が騎士団に入れてくれ!といっていた。
親父は駄目だといっていたけど俺様的には有だと思う。
可愛いし、好みだし。そんなことを親父に言うと、じゃあお前のお膝元に加えてやれといった。
俺様は喜んだ。こいつは俺のことを気に入ってくれるだろうか。
いや、気に入るだろう。だって俺様はこんなにもかっこいいのだから!!]


「これは私が始めてあいつにあったときか」

[○月△日
今日も俺様はかっこかった。・・・・・(何処がかっこよかったかの下りは飛ばした)
名字が騎士団にはいった。
自ら進んで騎士団に入りたいといったから腕前は確かだ。
でもやっぱり女の子だ。危険にはさらしたくない。
…この俺様はこいつのことが気になっているのだろうか。
いや、それはない…とは言い切れない。ううむ、わからない。]


「これは…褒めて頭撫で撫でされた日か」

[○月□日
今日も俺様はとてつもなくかっこよかった。・・・・(何処がかっこよかったかの下りは飛ばした)
やっとわかったぜ!!
俺様はあいつのことが好きいや、愛しいようだ。
…どうやって告白しようか…いやでも相手はまだ子供だ。大きくなったら……]


「あぁっ!!」
プロイセンに取られた。読みたかったのに。続き。
そう思って日記をとった張本人を見る。
こころなしか、彼の頬が赤くなっていた気がした。

   ***

気が付けば名前が熱心に俺様の日記を見ていた。
それも一番危ない93番。あの旗の下で隠れて読んでいても俺様にはわかるんだ。
静かに近づいてバッと俺様日記を取り返す。
こころなしか、名前の顔が赤くなっていた気がした。



「ねぇ、ギルベルト」
名前はあまり呼ばない俺様の名前を読んだ。
「なんだ、名前?」
「あの、日記…」
「返さないぜ」
「いや、そうじゃなくて、あの書いてあることって本当なの」
「偽モンだったらどーすんだよ」
「悲しいわよ!!だって、だって私は」
「ストップ。此処からは俺様に言わせろよ」

せめて俺様のかっこいいところを潰すなよ。ぎゅっと彼女抱きしめる。

「俺はあの時からずっとずっと好きだった、名前のことが愛しいんだよ。なんだかよくわかんねぇけど…」
クスリと、彼女は笑った。
「…何その告白の仕方」
「うるせぇ」
一言余計な奴だ。
黒鷲の旗の下で俺と彼女はキスをした。

黒鷲の旗の下で
(私と彼の思いは伝わった)


090813
一人は楽しい。二人は幸せ。様へ
こういうの好きです。


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