さよならといって、の続き
電車の音が響き私は伸びをぐっとした。周りにはほとんどいない。
「池袋とは大違いだ…」
そう呟いて一人苦笑した。
勿論、そんなことはわかっていたことだし、別に今の景色でも気持ちがいい。
「そうだね、この景色全く違うや」
「本当ですよね…。っ!」
聞くはずのない声を聞いた。有り得ない。私は窓の反射から声の主をそっと伺った。
「え、折原さん?なんで?」
「メールしたはずだよ?」
あれ、私彼にアドレス教えたっけ。携帯を確認するとチカリ、と光るランプ。
「本当だ、よく私のアドレスわかりましたね…。難しくしたはずなのになぁ」
にやり、と笑い返答しない折原さん。どういう状況だ。
「俺はね、君のお陰で命拾いしたわけ。でも引越しの手伝いだけじゃあ、意味ないって思ってねぇ」
はあ、とした相槌しか打てない。どうしたんだろう、全く。
「とりあえず君の実家に泊まる予定だから、よろしく」
そういって折原さんは眠りについた。いいのかそれで。
実家についたら、母親が折原さんのほうを見て目を輝かせていた。物好きだな…。私は荷物を持ち自室へと向かった。自室には、折原さんが詰めてくれた段ボールが山積みで、私はゆっくりと山を崩していった。
「すごい量だねぇ」
「私こんな詰めた気ない…」
「ま、俺の荷物もあるけど」
「は?」
今、聞こえちゃいけないことが聞こえたような。
「いやだから、俺の荷物もあるんだよ」
「泊まる気満々ですか…」
勿論、そういって彼は自分の荷物を山から崩し、出していった。
「お、回線いいんだ」
「仕事ですか?」
「まあそんなとこかな」
人の悪そうな顔をして、彼はPCを使いだした。別に問題はないが、それ以外のが一部乱雑になっていた。気になる。
「整理しますから」
一言声をかけ、乱雑な荷物を整理する。自分の物は少ないので割と早く終わってしまった。
5つ段ボールがあった中で3つは私(洋服、用具、割れ物)で、残り2つは彼のもの。割れ物は母に渡してないのでもうしまうだけだった私は彼の荷物を開け、整理し始めた。
「折原さん黒い服しかないんですか…」
PCが入っていた中には服が。それも黒い服しかない。確かに黒い服しかきているところしか見たことない。他の色着てもらいたいなあ、と思いながら洋服を畳む。
「じゃあ次は…」
「次のはいいよ、俺がやる」
「そうですか、」
私は段ボールから離れ、自室のベッドへと寝転がる。別れるつもりだった。助けたのは間違っていたことではないけれど、それで礼を言われ惚れた、なんて私には有り得なかったし。池袋から別れるなかで彼とも別れるつもりだった。だから今ここに彼がいるのなんて予想もつかなかった。
「俺さ、まさか簡単に来れるとは思ってなかったよ」
「え?」
「別れるつもり、だったんでしょ?」
微笑んで私に問い掛ける。この人はなにもかもを理解しているんだろうか。
「でも、やらせないよ。俺は君が気に入ったからね」
さよならはいわずに、手をつなぐ
111021
続き書いてみたかったので書いてみました。
このまま続きそうだな…