それは急にやってきたのだった。
何十回も聞いているラヴソングにぴくんと体が反応し、彼を見た。彼は鼻歌を歌っていて、おかしいくらいにトーンもリズムもあっている。そして声も似ている。おかしい。おかしいだろう。
「あ、あの、」
「あ?」
相手の人は急に止められたようで機嫌が悪い。
「えと、ですね」
「用ないんなら…」
「あ、あります!」
怪訝そうな顔をして私を見ている。なんだか上から下までなめ回してるくらいに見ている。
「ふぅん、いい体してんじゃねぇか」
「へ?」
「よし、こっちこいよ」
私は彼に手を掴まれて、道を歩き始めた。
これが始まりでこれで終わりなことを私は知らない。
「ここは…?」
「ホテル」
「いやそれは知ってますが、なぜ…」
「わかってんだろ」
目付きがこわい。さっきの人じゃないみたい。
「おびえてんのかよ…はぁ萎えたぜ」
肩を落とし、近くによってくる彼。
「なんでお前は俺に声をかけたんだ?」
「歌が…」
「あぁこれか?」
鼻歌ではなく生歌。やっぱり勘違いではなく、あの人だった。ぽろりと涙を落とす。
「な、何泣いてんだよ!」
「いや夢かなぁって…」
そういったら彼の手が私に伸びる。
触れられたところから赤みが増す。体温が上がる。
「ほら触れた、嘘じゃないだろ?」
手を伸ばすと彼の暖かい、人肌。
「名前はなんて?」
「歌手名まんまだ」
「ギルベルトさん、ですか」
「あぁ」
そういって屈託なく笑ったのはいつだったんだろう。
一晩でその暖かさは冷めてしまった。
ショットガン・ラヴァーズ
(愛なんかなかった)
111012
ボカロから連想。
一応補足、
ギルは歌手
夢主はただのファン