さよなら、と私は呟いた。
もう会うことはないだろう。
さよなら、廉造。
私は基本独りぼっちだった。別にいやな訳ではないしすきな訳でもなかった。でもそれを変えたのは貴方だった。
貴方は所構わずナンパやらしていて最初私は驚いたの。ナンパなんてしてる人いるんだ。そう驚いたの。でももっと驚いたのはピンク色をした髪だった。
「なぜ、ピンク?」
「いや、女の子ってピンク色好きやんか…やからつい、な」
志摩くんの髪は多分柔らかいと思う。ふわふわだ、ふわふわ。でもワックスで固めてあるのかな、固いのかな。
そんな感じでほとんど志摩くんのことばっかり考えていた私は、だんだん独りぼっちではなくなっていた。
「志摩、くん」
「なんや?」
「えと、あの付き合って」
「…!えぇよ!」
多分彼は気付いていたんだろう。私が声をかけ、そう言ったことも。だって、貴方はそういう人でしょう?
仲良くなって私達は名前で呼び合うようになった。でも一線壁は出来ていた。私はその壁の意味をわかっていなかったけれど、廉造はわかっていたんだろうね。
どれだけ好きだ、って思っていても口に出さなきゃ伝わらないってことくらい。
私達の関係は所謂自然消滅だった。あっさりしていたんだ。でも、まだ私は諦め切れなかった。彼にアピールしたり、ただの女の子に成り下がっていったのだった。そして私は聞いてしまっていたのだった。
「あの子も普通の女の子やったんやな、残念や」
あの子というのは私だけとは限らないけど、普通になったと自分では自覚していた。好きな人にアピールして気付いて欲しくて…。
そんなの、ただの、女の子だ。
ああ、わかっていたのに。
やってしまったんだ。
それから志摩とは関わらなくなった。でもあのピンクの髪は忘れることは出来なかった。
好きだったよ、誰より
(言えずに押し殺した気持ち)
111007
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