さよなら、そう呟いて私は電車へと乗り込んだ。
ただ、ちょっと外の世界を見たいだけだった私は、親に無理をいい東京の池袋にある大学を志望した。運よく合格し、一人暮らしをしていた。
少しボロい感じだが不備を感じることなく楽しく生活をしていた。近所には一人暮らしの高校生や、フリーター?もいたが割と人間関係も上々だった。
ある日のことで私の住んでいるアパートの近くで人が倒れていた。死んでいるか確認したところ生きていて、私は救急車を呼ぼうと携帯を出した。
「や、めて、くれない」
私の携帯を持っている手を掴み、倒れてた人が私に言った。
「なら、家に連れてきます」
そういって、倒れていた人を担いで自室へと連れていくことにした。一階なので、少し引きずったりはしたけども。
倒れていた人――いや、彼を玄関へ下ろし、応急手当をすることにした。そして彼の知り合いの医者へ連絡し、処置を受けさせた。
それが、彼、折原臨也との出会いだった。
「この前はありがとう」
そういって一週間前に彼はやってきた。私は少し驚いた。あの時は怪我ばかりだったので容姿を見る余裕なんてなかった。
「いえ、ご無事で何よりです。…何か用件が?」
彼はにやりと人の悪い目を見せ、よろしくと私に語りかけた。彼は、よくわからない仕事をしていた。情報屋って何だ。
大学も終わり、自宅に帰っていた私は、軽く食べるものがないことを思い出し、コンビニへ寄ろうと回れ右をしたら、ポケットの中で何か揺れる感じがし、取り出してみると携帯が着信を知らせていた。誰だかわからないがとりあえず出る。
「もしもし?」
「お、繋がった。覚えてるかな?」
「折原さん、ですか?」
当たり、と軽い声を出して彼は、私を食事に誘った。
「すみません。もう、帰るので」
そういって私は通話を切った。何故なら私の優先は荷物を纏めて、実家に送ること。食事になんて行く余裕もない。
コンビニで何かしらを購入し帰路を急ぐ。私の家は煌々と明かりがついていた。
「…泥棒…?」
ドアを開け、部屋を見る。中には綺麗に詰まれた段ボール、そして黒い人がいた。
「遅かったね」
「……折原、さん?」
今、実家にある荷物はほとんど折原さんが荷造りをしてくれた。
「まさかいるとは思わなかった」
私は思い出しながら苦笑して、窓から外をみる。池袋は遠く、見えなくなっていった。
さよならといって、手を振るんだ
(それは、淡い恋心と一緒に)
110916
企画提出。
ありがとうございました!