「ざやちゃん、ざやちゃん!」
そう言って俺の周りを駆けるのは従姉妹、の名前。
当初、いざ!いざ!と言ってた彼女。でも俺の妹達に嫌な目に合わされたらしく、ざやちゃんになった。
(いざ→いざ尋常に勝負、だと俺の妹達は思ったらしい。ただの馬鹿)
「ざやちゃん、ざやちゃん、あそぼ!」
「…仕事残ってるんだけど名前」
にこにこと汚れのない笑みは俺の心を綺麗にしてくれる、といっても過言ではない。
「なみちゃん、ざやちゃんもらっていー?」
「いいわよ」
いつの間にか波江さんと仲良くなっている。
冷蔵庫の中には名前が好きなジュースが入っているし、波江さんとの仲がうかがえる。
「臨也、名前ちゃんと遊んであげなさい。資料はまとめておくわ。そしたら帰るから」
「了解、波江さん助かるよ」
「なみちゃんありがとお!」
そういって俺と名前は、新宿の町へと繰り出した。
「ざやちゃん、わたしね、あれしたいの!」
「…あれ?」
そういって目の前にあるポスターを指刺す。
そこには、今大人気で女の子受けするアニメのポスター。
でも確か先週終わったんじゃ…。
「名前どういう意味?」
「わたしあれになりたい!」
…憧れ、でいいのか。
さすがに変身とかは…。
むしろ、ビームとか出せるわけ…。
「…できない、のかな?」
しゅん、とうなだれる名前。
「ちょっと、待ってね」
そういって、取り出したのは携帯電話。
「もしもし。ああ、俺。ちょっと頼まれてくれない?我が儘なお姫様がいてさ。ああ、うん。わかった。そっちに行く。気をつけるよ」
「ざやちゃん、わたしできる?」
涙を少し浮かべながら悠は俺を見る。
「秘密。とりあえず俺についてきて」
そういって俺は彼女の手を引いた。
ついたのは、新羅の家。
とりあえず、ここで休憩。
「せるてぃ?」
『そうだ。よろしくな名前ちゃん』
女の子同士で気が合うみたいで、仲良く喋って?いた。
「あんな子が僕達の娘だったらいいのに…!」
「…新羅、頼み事は出来てる?」
ああ、と新羅は頷いて俺に紙袋を押し付けた。
「彼女頑張ってたよ…?多分。でも、独り言が怖かったね」
ふぅん、と特に興味ない返事をし、名前を呼んだ。
「ざやちゃん、このふくろなぁに?」
「みてみれば?」
わあ、っと彼女は笑顔を浮かべる。
そして、いうのだ。
「ざやちゃんだいすき!」、と。
「……いてっ…、夢、か」
気がつけば、ソファーで寝入っていたようだ。
「ざやちゃん、寝過ぎ!」
からからと笑う彼女は歳をとった。
あのときは…、小学生で俺は高校生だったような。
「しっかし、変な夢見たよ。昔の名前ね…」
「えっ、どんなの見てたの?」
「秘密だよ」
そういって俺は彼女に対して笑みを浮かべた。
昔も今も
110817