もじ | ナノ
(審神者出てきてません)


赤く綺麗に塗装をされた爪はいつの間にか少し剥がれていてどうしたものかと俺は一人考えた。綺麗になればかわいくなれば愛される気がして必要とされる気がして自分を磨き、整え、笑顔を被った。元々川の下の子だなんて自分で言ってしまっているけれどそれが悪いだなんて露ほども思っていない。そういえばこちらを向いてくれるんじゃないか、愛してくれるのではないか、必要とされるのではないかと思うのだ。こちらをずっと見て欲しいだなんて我侭だろうけれど我侭をいいたいのだ。あの人は僕と他のを手にしていたから。僕だけを扱ってくれなかったから。気づかぬ間にガリガリと削っていたのだろうか赤い爪は先程よりも剥げていた。紅い色の奥から見える色。その色は気持ち悪かった。とても、とても。見れたものではなかった。こんなものを見せてしまったら……そんなことを今の主にだなんて考えたくもないし、見せたくもない。赤い色は僕を綺麗に見せてくれる色。それだから今日も僕は窓をあけて、刷毛を取り出し一つ一つ丁寧に塗りつぶしていく。気持ち悪い色を見せないように、見ないように。

あぁそういえば、と加州清光はすんと鼻をすすった。鉄生臭い臭いは一切せず、ただ刷毛から香るつんとした臭いと夜の庭から香る草の匂いしかしなかった。そして彼の黒い服には自身で削ったのだろう赤い塗装の欠片とうっすらだが赤黒いシミが付いていた。

150520
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