(名前変換は仕事してません)
薬研は大丈夫だ、と微笑んだ。何が大丈夫なのかはわからない。けれどその笑顔がこころにしみた。ヒリヒリとこころがやけるように痛かった。こころが痛いだなんて可笑しいけれど。
でもその微笑みを浮かべるあなたもこころが痛いのであったらいい。
いたみわけ、してればいい。
近付けば近付くほど痛くなればいい。ヒリヒリと痛むこころ。
でもそのヒリヒリとした痛みはどう足掻いても消えない。
汚れをとっても、手入れをしても、その痛みは消えない。
彼は大丈夫だ、なんて微笑んだけれど大丈夫だなんて言えない。
「大将、」
「どうしたの、薬研」
ほらまた微笑んだ。
「また、違うとこ見てたよな」
違うところだなんて、そんなところは見ていない。今見ているのは薬研藤四郎だけだというのに。どこを私は見ていると彼は言うのだろうか。
「大将、俺っちたちは刀なんだよ、だからよ、怪我したって何したって研いだりすりゃ、手入れすりゃ直るんだ。破壊、されなきゃな」
破壊。あぁ、破片か。見ていたのは。彼から落ちたひとかけの破片。彼が彼である大切な破片。
「大丈夫だ、大将」
そう言って彼は自身の破片を拾う。
「まだ大将は俺っちが必要なんだろ?だから大丈夫だ、」
ずるい刀。ヒリヒリと痛むこころは相変わらず。
壊されるだなんて考えたくない。近くにいつもいたからこそ壊れるだなんて思いたくない。
近付けば近付くほど痛いんだ。
こんなに近くにいたから痛い。
150520
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