僕がまだこの血肉を通わす体を手に入れていなかったとき、切り取り落とされた首は見せしめとなり僕の刀の精密さを現していたことがあった。
沖田くんも首を落としていただろうけれど見せしめではなく自分でもなく組の為に少しでも役に立てればという一心でこの僕を振るってきたのだと思うのだ。
力強く鞘を握られ鮮血が弾け飛び羽織が赤黒く染まる、あの感覚。手は心と繋がっているというのだろうか。なんとなく感じていたのだ。
この沖田という人物は自分の私利私欲だけで僕を振るっているのではないと。
今の主も私利私欲だけで動いているわけではなさそうであった。上に言われ仕方なく命令を飛ばしているようで。
「安定、」
「どうしたのさ」
僕のことを未だに振るうことはない主はぼんやりと虚空を見つめ目をきゅっと瞑った。そして瞬きを数回。
「呼んだだけと言ったら怒るかい?」
「別に、そんなことで怒らないよ」
息をしてないよりかよっぽどいい。
150224