もじ | ナノ
※BF(仮)の逢坂くん。
ちなみに逢坂くん視点。
名前変換は仕事しません。


彼女の字を見るだけでなんとも言えない気分になる。

「逢坂くんって字、綺麗なんだね。私丸文字だからそういう綺麗な字に憧れるよ」
「丸文字?そうなのかい?少し書いて見せてよ」
「いいけど、下手くそだよ?」

少し眉を下げ、怒らないでねというような表情を見せる彼女。やはり僕のヒロインにぴったり。

「君の字だからこそいいんだよ。はい、ボールペン」
「え、ボールペンだと後残っちゃうよ、いいの?」

むしろ君のあとを残したいからボールペンを渡した、だなんて言ったら気味悪くなるだろうか。

「いいよ、この紙そんな大切でもないから、ね?」
「逢坂くんがいいならいいけど、なんて書けばいいかな……」

トントンと僕のボールペンを頬に当て悩んでいる姿はやはり寸分の狂いもなく彼女で、いや彼女以外の何物でもないのだが、僕のボールペンが彼女の頬に当たっているとなるとなんとなくいつも無造作に使っていたボールペンがいきなり高貴なものになった。

「できた、」

ボールペンになりたい、というところまでいって僕は彼女の声で我に帰った。さすがにまずい。

「なんて書いたの?」
「逢坂くんの紙に書いたものだから、逢坂くんの名前書いてみたの、合ってたよね、これで」

そう言った彼女の紙には僕のフルネーム。

「そう。あってるよ、知ってたんだね」

彼女が僕のフルネームを知っている、嬉しい。

「逢坂くん、私と仲良くしてくれる友達だもの。覚えてなかったら失礼だよ、」

はにかみながら笑う彼女と、彼女の字を対比させながら、彼女の文字は彼女らしさを現していて、僕にとって魅力的なものであった。

「そうだ、僕の名前書いてもらったから君の何かに君の名前を書くよ」
「え、そんなのいいよ、書くものないし」
「なら、この紙に書くから持って帰ってよ、今日の記念、みたいな感じでさ、ね?」
「うーん、わかった、いいよ」

押しに弱い彼女は、僕がとても綺麗に彼女のフルネームを書いた紙を鞄のクリアファイルの中に入れた。

「逢坂くん、ありがとね。今日の記念でちゃんと取っておくね」
「もちろん、僕もだよ」

チャイムが鳴り、下校時刻となる。

「もう、帰らなきゃね、そうだ。送っていくよ、この時間まで引き止めていたのは僕だし」
「遠回りになるから大丈夫だよ、逢坂くんが帰り遅くなっちゃうよ」
「そんなことはどうでもいいから、ね。送らせてよ」

無理矢理彼女を押し切り、彼女の家の近くまで送り届ける。わざわざごめんね、ありがとう、と笑う彼女は天使のようだった。




僕は家に帰り、今日の記念の彼女の文字を机の上に取り出した。虫眼鏡と筆跡鑑定の本を準備して、彼女の文字を鑑定する。

「君との運勢を調べるくらい、いいよね?」

近くに置いてある彼女の笑顔の写真を見ながら僕は語りかけたのだった。

140711




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