「あ、」
私は1人の後ろ姿を見て声を出した。明るい金髪が今日の晴れに反射しキラキラと輝いている。綺麗、と思う。
「お、りんごちゃんじゃあないですか」
気づかれた。後ろを歩いていたのに、どうして後ろを振り向いたのだろう。いちいち振り向かないで欲しい。にやにやと笑うこいつは何を考えているのか全くわからない。何を考えているのだか。
「どうしたんですか?こんなとこで」
「こっちの台詞。あんたこそこんなとこでどうしたのよ」
「気分転換ですよ、軽くね。受験勉強したくないし」
「…どこ行くのよ」
一応私は国公立を目指していたりする。バカだ、バカだといわれているが、実際問題そこまでバカではない。テストだと上位20には含まれている。
「ああ、大学ですか?全く考えてなかったですね」
はは、と笑いながらそのまま二人で並んで歩いていく。はたからみたらデートみたいに見えるのだろうか。…ちょっとお洒落しててよかった。
「そういえば、りんごちゃんの私服始めて見ましたが似合ってますね」
「…っ」
心構えをしてなかった。うわあ、うわあ。いわれたいなんて思っていたけど、実際に言われるとこんなに照れるものなのか…!
「あれ、どうしました?りんごちゃん顔真っ赤ですよ」
「気のせい!」
さっきまで目を合わせて話していたのに、恥ずかしくなって、ふいと目線を逸らした。
…こいつの私服はじめてみたけど案外そこまでチャラそうな服着てるってわけでもないのね…金髪でなんだかムカつくけど、服はそこまで…って何考えてるのよ私!
「…りんごちゃん?」
「何よ」
「照れてます?」
「そんなわけ…」
「顔、真っ赤ですし、そんな顔で否定されても信じられませんぜ」
人通りが多い道を抜け、私は溜息をついた。人ごみは少し苦手だ。
「りんごちゃん、休憩しましょうか」
そういって、あいつが指差したのは少し古ぼけた看板が目立つ公園だった。古ぼけている、といっても休日なので小さい子供はちらほらいたりしている。楽しそうだなあと思いながら私は自動販売機を見た。何、買おうかな。
「りんごちゃんは、名の通りりんごジュースでいいんじゃないですか」
「何それ。あんたは髪が黄色いからオレンジジュースにでもすればいいじゃない」
「黄色じゃなくて金髪ですぜ」
「一緒よ、そんなもん」
そんな小競り合いをしながらも結局りんごジュースを買った私は相当きてると思う。ちなみにあいつは夏みかんジュースだった。そこはオレンジ飲めよとツッコミたいが何もいわないこととする。
「りんごちゃん、」
「何よ」
「さっきからそこらにいる子供たちが【付き合っているのかなー】とかヒソヒソいってるの気づいてます?」
「え、全く気づいてなかった」
「やっぱりそうですよね」
はは、と空笑いをして、飲み終わった夏みかんジュースをゴミ箱の方向に投げて、遠くに落ちた。
「ちゃんとゴミ箱にいれてきなさいよ」
「入ったと思ったんだけどな…」
そうぼやいても入ってないものは入ってないんだから、ちゃんとゴミを捨ててくるべきだと思う。くい、と少し残っていたりんごジュースを飲み干して私もゴミ箱に捨てに行く。あのバカみたいに投げたりはしない。中身飛び散ったらどうするのよ。
「お、ついてきたんですか?」
「なわけないでしょ。ゴミ捨てにきたの」
カランと音を立て、ゴミ箱に中身がなくなったりんごジュースを捨てる。
「りんごちゃん、」
ゴミ箱より奥にあいつのジュースは落ちたからかあいつは私の向かい側にいて、真ん中にゴミ箱。
「何よ」
言葉を発すると、すいとジュースを持っていないほうの腕を私のほうへ伸ばしてきた。何がおこるのかよくわかんなくて、ぎゅっと私は目を瞑った。
ふ、とその手は唇について、くいと何かをぬぐわれた。
「唇に髪の毛ついてましたぜ」
え、と思いぱちりと目を見開くとよくわからない笑みを見せながら指を見せる。確かに私の髪だ。でも、でもわざわざとらなくてもいいじゃない。いえばいいはずなのに!
「りんごちゃん、帰りましょうぜ。家まで送りますし、ってどっち方向ですか」
「いいわよ、そんなの」
「りんごちゃんは女の子でしょう、」
有無を言わせないような目をして私に顔を近づけてくる。ふんわりと柑橘系のにおいがして、あぁそういえば夏みかんジュース飲んでたなあと思い出した。
「あっち、」
すっ、と指差すと簡単に方向転換をした。
「じゃ、帰りましょうか」
にっ、と笑みを見せて、まだほうけている私の手首をつかみ私の家の方向へとそのまま向かったのだった。
何もいえない
120325
またもや某ぴくし●から。
最近NLを某ぴく●ぶに書くのはまってます 何故