方言はもどきです
すみません
俺には二人の生きている兄がいて、一人は過保護で一人はべったり。彼女でも作ればええのにとは思うんやけど、内心ちょっと嬉しかったりするんや。
勿論二人には言えへんけど。
「廉造、」
名前を呼ばれ振り返ると目に痛い金髪が見えたんや。それで俺は金兄かと思う。目立つからなこの金髪。そして俺は金兄のそばへよる。
「金兄、」
仕返しだと言わんばかりに俺も兄の名前を呼んだんや。
そしたら全く考えもせんことを言われた。
「今日、バンドあんねん。やからこれチケット。ちゃんと金造様のかっこいい勇姿を見るんやで!」
ばん、とたたき付けるように渡されたチケットは少し湿っていて、あの兄でも緊張するんやなあとズレたことを考えた。
「……今日、か」
今日はこれから用事があったんやけど、チケットまで渡されたらもうどうしようもないやろ。
結局、俺は金兄のライブに来ていて、金兄の演奏を聞きながらぼおと兄の勇姿を見つめていた。
「女の子沢山おるなあ…」
きゃあきゃあと黄色い声が大きく聞こえ、それほどまで金兄は人気なのかと感心する。
「廉造!見に来てくれたんか!」
「金兄が、チケットくれたからやろ?」
一部始終終わり、携帯に連絡があるとおもたら、金兄で。
裏口で待ってろといわれたので待機していたら、ファンだかなんだかの女の子が沢山いて少しいらっとなった。
俺と金兄の会話が終わると彼女ら我先に、というように差し入れを渡す。
「廉造、手伝え」
「え」
どさ、と差し入れを渡され、荷物持ち状態に。なんも面白くない。
むす、と機嫌を損ねているというのに金兄はかわらず女の子たちと話している。むかつく。
「帰るか、廉造」
そういって俺らは二人並んで帰りはじめる。
自慢話を聞き、家につく。
気がつけばいらっとした気持ちは消えていた。
好きだとか嫌いだとか
そんなことはわからへんけど、俺は金兄のことは兄貴として好きだと思うんや。多分。
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難しかった、です
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