もじ | ナノ
 ありがとう
     さようなら


びゅうっ、と冬独特の風がふいた。
さむい
息を吐いたら、真っ白で視界がくもる。

隣を見ると名前が手に自身の息を吹きかけていた。

「さみいのか?」
「うん、さむい」

当たり障りのない会話。
一時期よりかましにはなったが、どうしようもない

「ねぇ、ギル。寒いね」
「そうだな」

名前は頬を赤く染めていた。

「なあ、名前」
「何?」
「なんでもない」

なんでもないって…と少し微笑む彼女。

そんな彼女のことが俺は好きだった。

手が寒いから渡してやろう、と思った手袋は今俺がつけていた。

ああ、意気地無し。
言えばよかったのに。

「ギル、もうここでいいや」

彼女は笑って、ありがとうといった。
俺は笑えなかった。

「…いいのかよ。俺」
「ギル?どうしたの…。なんでもないなら私行くね?」

俺の元を離れて行く名前を俺は抱きしめた。

「ごめんな名前。もう少しこのままでいさせてくれ」
「えっ、あ、いいけど」

ぎゅっ、と彼女を抱きしめる。
甘い香りが俺をつつむ。

ごめんな。 名前

「名前好きだ」

そう耳元で囁いて、唇を奪う。
彼女の耳が赤く染まる。

彼女の目が閉じられることなく俺を見る。

「ばか、バカギル」

彼女は唇を離した途端に俺にたいし暴言をはいた。

「ばかでいいぜ」

彼女は去る。
そんなことは知っている。

だからまってくれ。

「名前、これやる」

そういって渡したのは手袋。

彼女はへらっと微笑んで受け取った。


「ありがとギル。…そしてさよなら」



初めての恋は実らない




110401

切ない感じを目指したらこうなった


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