もじ | ナノ
その優しさは死んでもなおらないんだね。


ふと、私に向けた言葉を彼が言ったのです。

「…お前の優しさは死んでもなおらねぇな」
「それがどうしたというのです?」

優しい、ことはいいとは思います、でも、別にかまわないとでも思います。
 
「いや、だってよお…」

ならあなたはいつから変わってしまったのですか。
昔と比べたら凄い豹変振り。
可笑しくはないのでしょうか。
なんだか哀れな道化のようです。
ふと、彼がこちらをみて笑う。
嗚呼、その笑い方は変わっていませんね。

どうしてでしょう。
どうして、昔の彼と今の彼を比べてしまうのでしょう。

「なぁ、菊」
「どうしました、ギルベルトさん」

ケセセと笑っていた彼は、私の名前を呼んだ。
名前を呼ばれただけでトクン、と跳ねる私の心。
(心、という器官はないはずなのに…)
嗚呼、どうしてでしょうか。

「・・いや、な。そうだ!和菓子?の作り方教えてくれねーか!」
「…べ、別にかまいませんよ?」

そして、又ケセセと笑う彼。
どうして気づかないのでしょう!?
私はこんなにも貴方のことを思っているのに!!
しかし、最初の言葉はそのままそっくり貴方に返したいです。
だからこそ、私はあなたのことが心配すぎて大変なのです。

+++

久しぶりにこの家へ来た気がする。
カラ、と引き戸を開ける。

「だから、───なんですよ!!」
「…そうですか。解りました。善処しますので早めに帰ってください」

あ、菊と菊の上司の部下が話しているようだ。
物分りがいいと思ってしまえばいささか楽だとは思うが、絶対に違う。
我慢しているのだ。
上司にいい報告が出来るように我慢しているのだ。
タイミング、間違ったか?とは思うがそんなことは気にせず、家に上がる。

「っと、ここでは靴を脱ぐんだったな」

以前靴はいて上がったら菊に散々叱られて、雑巾がけさせられたな。
と思い出し、靴を脱ぐ。

「あっ、こっ、こんにちは!!」

元気な声が後から聞こえた。
…さっきの部下、か。

「よぅ。あ、これからも頑張れよな」

菊の我慢を無駄にはできない。
だからこそ、俺も我慢する。

「いらっしゃい、ギルベルトさん」

ひょっこりと居間から出てきた菊がこちらを笑顔で見つめてきたからちょっと動揺してしまった。

「…お、おぅ、邪魔するぜ」

この笑顔はやべぇ。
ないはずのものがトクン、トクンと動いている。
菊が居間で待っててください、といったのでポツンと一人で待ってみる。

「…どうぞ。貰いものですけどね…」

ありがとよ、と俺は礼をいい。
ふと、思った言葉を菊にいった。

「…お前の優しさは死んでもなおらねぇな」
「それがどうしたというのです?」

返答が早かった。だから、こそだ。

俺はとっても心配なんだ。
優しすぎて、お前が消えてしまうのではないのか、と。


その優しさはきっと、死んでも治らないんだね。
(だからこそ、心配なんだ…)


091121
ここまでかみ合わない話があるか パーン
ちょっと心配性な普すきです お兄ちゃんとよびたい


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -