もじ | ナノ

俺は昔から"アイツ"のことが嫌いだった。
「…よぉ、アーサー。紅茶を入れてくれないかい?」
「ったく、挨拶もなしで紅茶を所望すんじゃねぇよ!!」
俺はそういうが内心別にかまわないと思っている自分が疎ましい。
「まぁ、今俺が入れてやってんのは別にお前のためじゃないんだかんな!自分のを入れてるついでにいれてるやってるだけだかんな!!」
それを”はいはい、わかってるよ”と受け流す"アイツ"は俺の中で1位、2位を争うぐらいの気にくわなさだ。
「んじゃあ勝手に入った謝罪と紅茶を入れて貰ったお礼にお兄さん手作りのお菓子をあげよう」
俺は、こいつの料理の腕だけは認めている。いや、こいつのとこの料理が好きだといっても過言ではないぐらい。
「…っ!ありがとよ、フランシス」
"アイツ"の名を呼ぶ。呼ばれた奴はきょとん、とした顔をして”どーいたしまして”と返事をした。
「はいよ、所望してた紅茶だ」
そういって紅茶をフランシスに差し出す。
しっかりと温度調節、こいつに合う茶葉など色々なことを考えながらいれた。
美味しくないはずはない。
一生懸命考えたのだから。
フランシスのとこのお菓子に合うお茶を。
でも、俺は「どうだ?美味いか?」と聞く自信がない。
フランシスが返答してくれるのを待つだけしか俺には出来ない。
フランシスは紅茶を飲んだ。
「…んー、やっぱりアーサーのとこの紅茶は美味しいな…」
欲しかった言葉がもらえて嬉しい。
俺はそのとき自分が笑っていることに気づいていなかった。"アイツ"はこっちを見て微笑んでいた。
「なっ、何見てんだよ!!」
「いやぁ〜、可愛いなって思ってさ……」
そんなことを急に言われた俺は一気に顔が赤くなる。
「なっ、なっ、何言いやがるんだぁっ!このばかぁ!!」
その後、"コイツ"は信じられないことをぬかしやがった。
「だって、俺の料理が好きなアーサーさんに俺自身のことも好きになってもらいたくって?」
何言ってんだこいつ、と思ったのちにその言葉の意味を考えたらなんだか無性に恥ずかしくなった。
「…それって、俺に対しての告白かなんかか?」
「そんな考え方もお兄さん的に結構だよ?」
なんだか嵌められているような気がしたが素直にいってみることにする。
「っ、おっ、俺も、お前のこと……好き…じゃないんだかんなこのばかぁ」
訂正、この俺は恥ずかしくて素直になれないようだ。
どうして俺は素直に「好き」が言えないんだろうか。
でも、よしとする。
向こうはしっかりわかっているはずだから。



090702

最愛なるしろ(彗)様に捧ぐ。
初めてフラアサ書いたんです ごめんなさい。

お持ち帰りはしろ様のみで。



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