もじ | ナノ
※普消失,視点は洪さん



さよならだなんて思いたくなかった。

昔の話だ。
あいつは強かった。
だれにも負けはしないと自身でいっていたくらい強かった。
あたしはあいつと喧嘩ばっかして、色々と叱られていたときもあった。
何が悪いかって、あたしが喧嘩をしてきた、のではなくただあいつをいじるのが楽しくなった、だけなんだ。
それが恋だとかは信じてなくて、ずっとずっとただの友人だと思ってた。
そんなただの少女があたしだった。
こんな気持ちは初めてでわかったのは彼がいなくなってから3日経ったときだった。

「うそ、でしょ」

つきん、つきんと痛んでゆく胸の辺り。
あの人のことが好きだったって思ってたのに。
なんで、あいつなんか。

「どうしました?」
「なんでもないです、ただうるさいやつがひとりいなくなったなって」
「そう、ですね」

この人は悲しんでいる…。
それもそうか、この人とあいつは腐れ縁のような関係だったもの。

「…兄さんが、兄さんが…俺のせいで!」
「悔やまないで、あの人は…わかっていたのよ」

あいつの弟が泣いている。
昔から泣いているところを見てなかった。
そんな弟だったのか。
ああ、本当に彼はいなくなったのか

夜があけ、キイッと郵便ポストがあいた。
彼女はまだ気づいていない。
そう、彼からの手紙。

「ありがとう、さよなら。また今度」

そんな手紙は彼女のもとに届き、彼女は泣いた。

「手紙じゃなくて…直接いえばいいのに…」

思い出した。彼は言っていた。数日前に。
ああ、アレが最後だったのか。信じたくない。
平和じゃない世界は平和になった。
そして、彼は消えてしまった。
ああ、信じたくない でも彼が決めたことだ。
この平和な世界を謳歌して、楽しんでいこう。

そう、決めた。

   ***

あぁ消えてしまったのか。
ごめんな、悲しませちまって
わざとじゃないんだ。
俺の意思だったんだ。

ほら、こっちを見てみろよ。

 手を振って、
  さよならって言った。
   あれが最後だなんて。

俺も信じられねぇ。

100708(追:110316)
「たとえそれが世界の意思と言われても」に提出させていただきました。
普消失ネタ。姐さんが気づいたらもう遅い。
でもその思いはなくさず前に進む…恋愛だっていいじゃないですか。
その想いが世界に伝わったら、素敵だと思います。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -