もじ | ナノ
なんだか、菊が遠い存在に感じた。一瞬でも、なんだか嫌だった。
心配性な俺は菊の家に電話するしか手がないわけで。
電話番号短縮1番、菊の家の電話番号を押した。
いつもは1コール、2コール、3コール目でガチャリと向こうが受話器をとる音が聞こえる。
だが今日は違った。
1コールの途中でガチャリという音が聞こえた。
「もしもし、誰だ」
ギルベルトの声がした。受話器の後からはパタパタと誰かが走っている音も聞こえた。
「ギルベルトさん!ダメです。早く私に返してください」
菊の声がした。
「誰が返すか。誰だか分かったら返してやるよ」
う、と俺はつまった。
今俺の声を出し菊と話すか、ガチャリと切りまたあとでかけるか。
…俺は後者を選んだ。
ガチャリと何も話さずに俺は電話を切る。
あぁ、俺はこんなにもダメなやつだったのか。
悔やむ。
「………あぁ、なんてことを」


一年中君ばかり想うの。


電話が鳴る音がした。
誰かがすぐとる音がした。
誰なんだろうか。急いで電話のところへ向かう。
「もしもし、誰だ」
なんだか不機嫌そうなギルベルトさんが電話を取っていた。
電話番号を確認するとアーサーさん。
はやく、かわって欲しいと思い、ギルベルトさんの元へ近づいた。
「ギルベルトさん!ダメです。早く私に返してください」
ギルベルトさんは私を一瞥した後
「誰が返すか。誰だか分かったら返してやるよ」
と意地の悪い顔で言った。
アーサーさんは多分切るだろう。
ギルベルトさんに悟られたくないからも。
わかっている。わかっているからこそなんだか胸が痛い。
ガチャリと受話器が置かれる。
「…よぉ菊。悪かったな」
さっきの意地の悪そうなギルベルトさんではなく普通の方。
「い、いえ別に、何か御用ですか」
しっかりといえない自分がもどかしい。
「あぁ、用がないといえばないのだが…まぁ耳を貸せ」
といわれしょうがなくも耳を傾けた。
「ヴェストとフェリちゃんに甘いものをあげたいから手伝ってくれ」
「そんなことですか…別にいいですよ」
笑顔でいうものの自分の心は罪悪感で満たされていた。

  *  *  *

「…やっぱり俺帰るわ」
「え?」
もう少しで甘い、甘いお菓子が完成する、そのときにギルベルトさんは唐突にいった。
「…つらいんなら、電話すればいいじゃねぇか。あいつ、によ」
あぁ、もうばれていましたか。
もう私はあの翠色の目、金髪の髪のあの人に食われていますよ?」
え?と俺は思う。何も勘違いなんかはしていない。これこそが真実なんじゃないか?
「その答がわかりたいのなら、今すぐ私の元へとこれますか?」
「い、いく。わかった、これから、な」
電話を切り、菊の元へと急ぐ。

  *  *  *

「菊!」
「いらっしゃい、アーサーさん。菓子と粗茶は準備できていますよ」
そういって菊は笑顔で俺を迎え入れる。
「菊。俺はそうじゃなくて。「わかってますから早く」
菊は俺を見て、客間へと通した。
「…アーサーさん、貴方が今聞きたいことはなんですか?1つだけ私は真剣に答えて差し上げましょう」
真剣な眼差しで菊は俺を見る。
俺の聞きたいことは決まっている。
「お前の好きな奴はだれなんだ」
「それは友人ですか、それとも恋人のほうですか?」
笑顔で俺の質問を返す。
「後者のほうだ」
「…わかりました。では私からも同じ質問をしたいとおもいます。貴方が心から好いている方は誰ですか?あ、今すぐ返してくださいね」
「え、今すぐか?」
なんだか嵌められているような気がした。
「えぇ、今すぐです」
「お、俺が心から好いているやつは……お、お前だ。なっ、なんてこといわせんだ!!このばかぁ!!」
恥ずかしい。
そのことを見過ごして菊は笑った。
「私も貴方のことが好きですよ?」

四季を彩るきみへ。

(俺がそのあと菊に抱きついたのはいうまでもない)






090713(多分)

一年後も、きみと 様に提出。普憫はいつでも普憫


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