もじ | ナノ
「おい、リヒテンシュタイン何処にいるのであるか?」
私の大好きな兄さまが私の名を呼ぶ。
「此処にいます、兄さま」
見ているとは限らないが声が聞こえた方向へと笑顔で答える。
走っている音と、草をかきわけている音がし始める。
「おぉ、此処にいたのであるか」
「はい、兄さま」
絶やさず笑みを続ける。
最近兄さまと過ごす期間が少なくなった。
兄さまが忙しいのはわかっている、わかっているのに寂しい。
でも、もし過労で倒れてしまったら私も倒れてしまいます。
「……兄さ「リヒテンシュタイン、今日は何が食べたいであるか?」
兄さまは私の言葉を遮って続ける。
「今日はお前の好きなモノを作ってやるのである」
珍しい、と私は思った。
でも、この好意は素直に受け取っておかないと…。
「…チーズフォンデュがいいです、兄さま」
「それだといつもと同じではないか」
兄さまはわかっていませんね。
「"いつも"食べているのだからこそ、いいのです。兄さま」
そうか…、と兄さまはいって下を向いた。
「…買い物に行くのである」
「はい」
兄さまと私は買い物に出かけました。
そこでちょうどオーストリアさんに会いました。
「ご機嫌麗しゅう」
「…あぁ、どうも」
「なっ、なんでお前が此処にいるのである!!」
兄さまはオーストリアさんのことが嫌いだ、といっていました。
「なんでって買い物に来たんですよ」
当たり前の答を返されて兄さまは返答が出来なくなりました。
「……」
オーストリアさんは私を見て少し考えているふうに見えました。
「…なんでしょう?」
「いえ、なんでもありませんよ。…私は時間なのでこれで」
そういってオーストリアさんは考え事をしながらも帰っていきました。
横にいる兄さまを見ると明らかに不機嫌そうな顔をして帰っていく姿を見ていました。
「兄さま、買い物をしましょう」
兄さまは、はっ、とした表情になって「…そうであるな」と呟きました。
買い物を終え、家へ帰ると郵便うけの中に手紙がはいっていました。
オーストリアさんからでした。
封を開けると機械音のする誕生日によく使われる音楽が流れてきました。
「…あやつに先を越されたか……」
私はやっと、気づきました。
今日何故兄さまが私に優しくしてくれたのかがわかったように感じられます。
「兄さまは一番最初に祝ってくれたではありませんか。それだけで私は幸せです」「リヒテンシュタイン……」
兄さまは私をぎゅっと抱きしめて囁きました。
「誕生日、おめでとう」と。
だから私も精一杯抱きしめ返して「ありがとうございます」といった。
「…今度兄さまの誕生日になったら私が祝ってあげますからね?」
私は兄さまに聞こえるか、聞こえないかの声音で呟いた。







090703
中立兄弟好きです
7月誕生日様への提出


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