もじ | ナノ
なぁ、お前まで俺を裏切るのかよ…?」
アーサーさんは涙目でそういった。
私が悪かったんだと思います。私が大切なことをアーサーさんに言わなかったから…。あんな大事なことを。

日英同盟を結び、戦争は終わり、平和な日常がゆっくりと過ぎてゆく。
「おーい、菊ー!!」
最近アーサーさんは私の家へ訪れることが多くなりました。
でも今日は先客がいたので、お引取りを願いましたが無理やり家へ上がらさせられました。
「アーサーさん、今お客さんが来ているので此処の部屋で待ってもらってもいいですか?」
客間にアーサーさんを通し、私は居間に戻り客人と話しをしていました。…あまりいい内容ではなかったのですが。
「…なぁ、菊。日英同盟を破棄してくれないか?」
客人とはアルフレッドさん。アルフレッドさんは、私とアーサーさんとの仲を引き裂こうとしているのです。その元である"日英同盟"を破棄したい、と思っているようです。そんなのはアルフレッドさんが求めても絶対に破棄しないと心で決めています。でも私ははっきりと答をいうことができずに「善処します」といった。
心の中でははっきりと"いいえ!!"と訴えていますがアルフレッドさんには逆らえないのです。そんなことを細々と思いながらアルフレッドさんを帰しました。
そしたら、アーサーさんが私の後ろにまわって言ったのです。
「なぁ、お前まで俺を裏切るのかよ…?」と。

う ら ぎ り

俺は居間へ消えてゆく菊を追っていった。
「なぁ、菊。日英同盟を破棄してくれないか?」
俺の弟だった奴は俺の仲をどんどん壊していく。
やめてくれよ、なんで壊すんだよ。
俺の仲を壊すなよ。
「善処します」
菊の声が頭に響く。"いいえ"って言ってくれればいいのに、なんで、言ってくれないんだろう。なぁ菊、お前まで俺を裏切るのか。
俺を適度に傷つけて、利用して、さよならするんだろう?なら最初から仲良くするなよ。
アルフレッドが菊に押され帰されてゆく。
玄関が閉まったあと俺は菊の後にまわっていった。
「なぁ、お前まで俺を裏切るのかよ…?」と。
よく分からないが、あのときの雨の音が俺の中に響いてきた。

き ら い

私は必死に否定します。
「そんな訳ないじゃないですか」
「…信じていいのか?」とアーサーさんは私の首を持ち上げて聞いてきます。首を持たれた私は声を出せることも出来ず、頷くことも出来ず、どう対処しようか悩んでいるところを見てアーサーさんはぐっ、と私の首を強い力で押さえつける。私は呼吸することがままならく、小さな喘ぎ声を出すことしか出来ない。私は力を振り絞って声を出した。
「アーサーさん、は、はなしてください!!」
「何故だ?何故離さなければならない。お前は俺を裏切ろうと企んでいるんだろう?なぁ、そうなんだろう?」
アーサーさんは虚ろな目をして聞いてきます。
「ち、が、ちがい…ま、す」
パッ、と瞬間的に手が離れた。
しゅるり、と布のすれる音がした。
私の目の前が真っ暗になった。
ぎゅと力強く抱きしめられる。
「アーサーさん?」
私には声しか聞こえません。
「菊が俺のモノになれば、菊は俺の元から離れられない…だろう?」
ぐぃっと顔を近づけられる。唇が合わさる。
優しい、なんてものはない。
私の全てを奪うようにキスされる。
口と口が離れる。
息が上がる。
「はぁ……アーサー、さん?」
「菊、菊、菊!!!」
アーサーさんは私の名前を呼び、またキスを攻められる。
私は何も見えない。
手首をもたれる。
何かできつく縛られる。
「アーサーさん?」
彼は私を抱きしめたまま目を隠されたモノをとかれる。
アーサーさんは涙を流しながら"大好きだ"といった。
私は"私もです"と返答して抱きしめようとしたが手首にかかっているモノが邪魔で何も出来ない。
「アーサーさん、コレほどいてもらっていいですか?」
微笑みながら彼に聞く。
「…菊がうらぎらないと約束するなら」
「誰が裏切るものですか……!!」
アーサーさんは悪かった、といいながら私の手首にかかっているモノを解いてゆく。全てを解き終わって私は彼を抱きしめた。彼も私を抱きしめ返した。
彼の体温を感じながら私はちゃんと申し出を断ろうと思いました。

090703

英を鬼畜にしたかった
でも無理だった


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