※ちょっと暗い
ふいに、息苦しくなるときが、あるの。
酸素は充分足りてるはずなのに、何故か急に息が荒くなって、深呼吸しても全然足りなくて脳が騒ぎ出す。
そんなとき、あたしは決まって水に飛び込んだ。
どうしたらいいか、なんて考えるまでもなく、あたしの体が水を求めるから。それが正解なのかはわからないけれど、とにかく水の中は落ち着く。
しばらくもぐってプールの中を見渡せば、目に飛び込んでくるのは楽しそうに泳ぐあたしのポケモンたち。
なんかいいじゃない、こういう世界。あたしだけが知ってる、世界。
もぐっているうちに息が苦しくなって、水面に顔を出さなきゃいけないのが癪だけれど。
そのうちにあたしは、水の中で過ごすことが多くなった。その時間はだんだん増えていって、今じゃもう、食事と睡眠とバトルの時以外はずーっと水の中。別に何をするわけでもない。ぼんやり浮かんでいるだけだったり、サニーゴと競泳をしてみたり。
そうしてあるとき、ふと思うのだ。
同じように息ができないなら、水中と陸上、どっちがいいのかしら。
なーんてね、考えるまでもなかったわ。
息が苦しくなる。脳が酸素を求めて騒ぎだす。
もう少しの辛抱よ。これを越えたら楽になるんだからね。
ぶくぶくと泡に飲み込まれながら、大好きな子たちに囲まれたあたしはそっと意識を手放した。
…はずなのに。
「…ここ、どこ?」
ひょっとして、天国?でも、そんなはずはない。あたしが死んだのはいいとして、じゃあ目の前にいるこいつも死んじゃったってこと?
「あんた、とうとう死んだの?」
「はあ?死にかけてたのはお前だろ。ったく、心臓止まるかと思ったんだからな。久しぶりにハナダジムに来てみれば、コダックがパニくって飛び出してくるし、何があったのかと思えばカスミはプールの底に沈んでるし。」
「…息が、できなくなったのよ。」
「水ん中なんだから当たり前だろ。」
「違う。…この世界で、もうこれ以上息が続かなくなったの。だから水にもぐってた。」
「…意味わかんねー。お前、死にたかったの?」
サトシに尋ねられて気づく。
あれ、あたし死にたかったんだっけ?
…違う、生きているのが嫌だったのよ。
「ねえ、サトシ。なんであたしを助けたの?」
「…俺、カスミいないと死んじゃうから。」
思わず起き上ったあたしとにやりと笑って見せるサトシ。
それを見たら、この世界も悪くないかなって思って。
久しぶりの酸素を思いっきり吸い込んでやった。
* * *
新年一発目からこんなんですみません。
でもそんなに暗くはない…はず。カスミちゃんを不幸になんて、私にはできませんから(笑)