夢SS アホ | ナノ

眩しい程の青空

眠気を誘う教師の声



昼飯の後の授業は特に眠気を誘い、生徒の半分が潰れそうになってる

宿主もその中の一人だ






今日の朝、オレ様は宿主の体を借りて名前の家に行った

名前はオレ様を見つけると嬉しそうに駆け寄ってきて、あの笑顔でおはようと言った

そして、二人で適当な話題を見つけて話した

スッキリした朝の空気の中で、名前とああして話すのは初めてだった

だからかはわからないが、そんなに上手く話はできなかった

それでも名前は一生懸命オレ様の話を聞いてた

そして、よく笑ってた

すげぇ、楽しいと思った

学校に着いてからは宿主を起こして、体を宿主に返した



そして、今の睡眠タイムに至る

名前はどうやら睡魔に襲われずに授業を受けているようだ

遊戯の隣の席で教科書をぼーっと眺めている


隣の遊戯は、とっくに夢の世界にいるようだ

眠そうな宿主は放っておいて、いつものように名前を見た

いつものように…?

そういえば、随分前からこうやって名前を見るのが日課になってる気がする

この幽霊状態のオレ様は、他の奴は見ることができない

もちろん、名前も

名前の席は宿主より後ろだ

オレ様は黒板を背にして、宿主に寄りかかって名前を見た

少しピンクがかった白い肌、澄んだ瞳、細い指に細い首…


純粋に綺麗だと思った

淡いピンク色のつやつやした唇が時折動いて、瞬きする度に長い睫毛が揺れる…





触れたい…




あの柔らかそうな唇に、オレ様の唇を重ねたら、アイツはどんな顔をする?



泣くか…?



それとも、いつも通り…



笑ってくれるのか…?




オレ様が名前を見ていると、宿主が睡魔に勝利したようだ

体を起こして、オレ様を見た

オレ様を見るなり、ノートの端に何かを書いた

オレ様からでは宿主の頭が邪魔になって何を書いているのかわからない

何かを書き終えた宿主は、書いた部分のノートの紙を手で切って、小さく畳んだ

それを後ろの奴に渡して小さい声でこう言った



「これ、名前ちゃんに回してくれないかな?」





…名前に…?

名前の名前を聞いたオレ様は反射的に宿主を見た

宿主は何事もなかったかのように授業を受けてるふりをしている

紙を渡されたやつは、さらに後ろのやつに紙と名前に渡すことを伝達する

名前の前の奴が回ってきた紙を名前に渡す

「…これ、獏良からだって」

「…え?了くんから…?」

紙を受け取った名前は、教科書で隠しながら畳まれた紙を開き、読み始める





すると、名前の顔がみるみる赤くなった



「…っ!?」



なんでだ…?

なんで赤くなった…?

何が書いてあったんだ?

宿主は何て書いた?

どうして宿主からの手紙でそんな顔をする?

またオレ様の中がぐらぐらし始めた

同時にモヤモヤも感じる

とっさに宿主を見た

宿主は少し後ろをむいて、ニコニコしながら名前に向かって小さく手を振ってる

名前は…






その宿主をみて、もっと顔を赤くさせ、少し焦ってるようだった




どういうことだ…?

どうして名前は宿主を見て、そんな顔をする?

この二人は…

どういう関係なんだ?

よく話したり、メールしたり、電話したり…

こいつらは…

宿主になんて書いたのか聞こうとしたが、やめといた

宿主は基本的に授業中はオレ様と話さない

見えないオレ様と話をするのは、かなり目立つからだ

それに、書いた内容を宿主が言うとは思えない

そして…

内容がもし…



いや、それは考えないことにした

考えるとイライラが増すことは、昨日の夜で随分こりたからだ

そうこう考えていると、宿主が少し体をずらしてノートの端に何かを書き始めた

オレ様に見えるように書いている

宿主は書き終えると、書いた文をシャーペンで軽く叩いてオレ様に見るように知らせた







『さっきから僕のこと睨みすぎ。視線が痛いんだけど。』



ノートの端にはそう書かれていた

オレ様はまた、無意識に宿主を睨んでたらしい



授業が終わった後、次は英語だからと、宿主が自販にコーヒーを買いに行くと言ったのでついていくことにした

「ねむ〜…英語の先生厳しいんだよ…」

宿主はブツブツ言いながら教室を出た

女共が宿主を目で追ってる

名前は…杏子や他の女子と話していた




…ダメだ

さっき宿主が名前に回した紙切れの事が気になってしかたねぇ

一体なんて書いてあったんだ?



宿主と名前は、オレ様が今考えているような仲なのか…?

宿主は、基本的に女と仲良くしたりはしない

うっとうしいんだろう

それでなくても周りから寄ってくる

あまり女に話しかけたりするところは見たことない




…名前を除けば




宿主は名前と話している時は楽しそうだ

昨日の電話だってそうだ

だから、宿主にとって、名前がなにか特別な存在なことは確かだ


名前は転校してきてからしばらくたった

最初はいろんなことに戸惑っていたが、今じゃすっかり馴染んでる

名前は、いろんな奴と話す

一番仲良いのは杏子だ

おそらく転校生の名前に一番最初に出来た友達だ

たまに姉妹のように見える

杏子も、特定の仲の良い女友達が出来て嬉しいんだろう

よく二人でじゃれあってる

そういえば、王様の方の遊戯は名前に好意を持っていた気がする

だが、おそらく…



名前と一番仲の良い男は宿主だ





その二人がもしも…?



…………





…オレ様には関係ない

何も関係ないことだ

だが、…そう考えるだけで凄くイライラする

名前は宿主を見てる…?





…嫌だ…




「…バクラ、今日静かだね」

「…あ?」

こいつらのことを考えてると、宿主がオレ様に話しかけた

「あんまり僕にちょっかいとか出してこないし。…何か悩み事?」

「…なんでもねぇよ…」

「…最近変だよ?」

「なんでもねぇって!!」

「…ふぅん…」

宿主は不信そうにオレ様を見ると、自販に金を入れてコーヒーを買った

「…これでなんとか乗りきらないとね〜。…うわっ、早く教室戻って飲んじゃわないと時間ないやっ」

時計を見るなり、宿主は足早に教室に向かった

オレ様もついていく



宿主についてって急いで教室に戻ると、名前が隣の席の遊戯と話してた





だが、ありゃ遊戯じゃねぇ…

王様の方じゃねぇかっ




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