夢SS アホ | ナノ

空が近い

まるで誰かが作ったみたいな青空が広がってる



オレ様は名前の手を掴んで、無理矢理屋上に連れてきた

お互い息を整えて、少し深呼吸をする

深呼吸をすると、さっきの名前と王様の奴の楽しそうな光景が鮮明に頭に浮かんできた




今週の日曜…だと…?

ふざけんな…





「随分王様の奴と楽しそうだったじゃねぇかよ…」

「え…?」

背後からまたキョトンとした声がした

コイツ…一日に何回その声出せば気がすむんだ…

「…日曜、アイツとどっか行くのかよ…?」

「…えっと…うん、予定は無いし…。誘ってくれたし…」

その返事に、オレ様の体がまたカァっと熱くなった

「…おめぇ…おめぇわかってんのかよ!!誘ってきたってのがどういうことか!!」

「…ひゃっ」

名前はまた小さく声を上げた


オレ様はあの倉庫のときと同じように、壁に名前を押し付けてた

「おめぇホントに…わかってんのかよ!!」

「…!!」

名前の顔のすぐ側の壁を殴った

さすがにビックリしたらしい

名前の体が小さく跳ねた

「…バ、バクラ…」

驚きながらも、名前の瞳はオレ様を見つめてる…

吸い込まれそうな瞳…




綺麗だ…


すげぇ…綺麗だ…



「わ、わかってるよっ。遊戯は…大事な…」





大事な…?

大事な…なんだよ…

嫌な予感しかしねぇ…



「王様はよぉ…おめぇが好きなんだよ!!」

「…へ?」





ほらな…

やっぱりわかってねぇじゃねぇか…

「…な、何言ってるのバクラ…遊戯は…」

「…なんで気づかねぇんだよ!!明らかじゃねぇかよっ!!」



鈍い…鈍すぎる…




「…好きって…そんな…そんなの…っ」

名前が俯いた

よく見えないが、少し顔が赤い気がする

「…何赤くなってんだよ…」

「…あ、あたし…」





ダメだ…

苦しい…

イライラする

ぐらぐらする





「…嬉しかったんだろ?王様に誘われてよぉ!!」

「…ま、待って…」

もうだめだ…




崩れそうだ…っ




「…っ…好きなんだろ!?アイツが!!」

「…!!」

名前が大きく目を見開いた

その表情が、





『当たってる』と言ってる気がした




「好きなんだろ!?なぁ!?だからあんなに楽しそうなんだろ!?」

「バクラっ…待ってっ」

「良かったじゃねぇかよ!!好きなやつに誘われてよぉ!!オレ様はおめぇは宿主と付き合ってんのかと思ってたけどよ!!」

「…やどぬ…し…?…了くん!?」

「…ハッ…浮気かよ?さすが、モテる女はちげぇなぁ!?」

「ち、違うっ…あたしっ…」






浮気…?

違うだろ…

名前はそんな器用なことできるやつじゃねぇ…

だけど、とまんねぇ…っ





「王様と、宿主と、どっち選ぶんだおめぇは!?」

「…ねぇ、待って、バクラっ…お願いっ…」




王様は名前が好きだ

名前は、王様か、宿主

そして、宿主も…

名前が好きなんだ




名前が…好き…





…好き…?




…好きって…なんだ…?

どういう気持ちを言う?





オレ様は…?



オレ様は…どうなんだ…?



オレ様は、名前をどう思ってる…?


オレ様は少し名前から離れて頭を抱えた



「…す…き…?」

「…バクラ…?」

名前がオレ様の名前を呼ぶ

その声が、オレ様の奥の方に届いて鼓動が早くなる





好き

好き…?

愛してる…?



わから…ない…




オレ様は名前といると嬉しくなる

今朝は楽しいと思った

昨日の夜に聞いた電話越しの声は心地よかった

知らない間に泣いてた

名前が他の奴と楽しそうにしてるのは腹が立つ

コイツの笑顔はオレ様だけのものであってほしい

そしてオレ様は…

『…あたしに吐き出して…?』




名前に触れられると…




熱くなる…





「…あ…あぁ…」



ずっと…




ずっとそうだったのか…




オレ様は…ずっと…






「…バクラっ…」

心配そうに名前がオレ様に近づく




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