MAIL[6] | ナノ









MAIL ‐6‐






シズちゃんは俺とメールすることどう思ってるのかな。
湯気のたつコーヒーを台所に放置し、ケータイを開く。
いちいちこうして気にしていたらキリがない事はわかっている。だが、どうしてもドキドキして、冷静になる事ができない。
こんな自分おかしいよね。

受信時間、12:45。
いつもより少し早い返信だ。

『なんだよどーでもいいけど早く返信しろアホ糞ノミ蟲。とりあえずぶっ殺す。飯は後ででいいから今すぐ池袋来い相手してやる。あと夜通し仕事すんなよ馬鹿』

……は?まず最初に頭に過ぎった感情は率直な疑問だった。

頭の回転が速いと言われる俺だけど、今は全然意味が何も読み取れない。
寝起きだからか、それとも脳がまだ状況を整理出来ていないのか。
改行がなく、所々濁点もない。そんなシズちゃんのメールを、俺はもう一度シズちゃんからのメールを見直す。

“早く返信しろ”

早く、って。なんだ、早くって。どんな上から目線だよ。

でも、こんな事でうれしくなってる自分も相当オカシイ。

まだこうやってメールしててもいいのだろうか。嫌い合っていても、メール交換は許されるのだろうか。


俺は続けて羅列された文字を読み進める。いちいち意味なんてないって頭ではわかってるが、どうしても意味を気にしてしまう。
全ての文面を見る限り、シズちゃんは怒ってるっぽい。

なんで怒っているのかはわからないけど、たぶん俺が何か気に障る事を言ったからだよね。知らないうちに怒らせたんだ。

最後に書いてある、"相手してやるから池袋に来い"という文。

本気にしてもいいのなら、俺が池袋に行ってもいいという事になる。
本当はちょっと、………ほんの少し会いたいという気持ちはないけど、会いたくなくはない。

はたまた、いつの間に冗談言う人間に成長したのではないのだろうか。


そうだ、駄目元で散歩程度に外へ出掛けよう。それのついでに池袋に行けばたぶん問題ないよね。

あくまでついで。おまけ。

そうと決まれば俺はキッチンから離れ、いつもの黒いコートを羽織り、そのポケットにケータイを入れ、軽く出かける準備をする。


「あら、出かけるの?」
「うん。ちょっと散歩に、ね」







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