捻くれやさん
「ねぇ新羅」
ちょんこんと、こじんまりとソファの上に座る臨也は、視線を合わせずに僕を呼び掛ける。
臨也は、たまに僕の家にやって来る。"たまに"というよりは気まぐれなのか、猫のようにふらっとこの場所へやってくる。
「あのさあのさ」
「なんだい?解剖なら引き受けるけ」
「俺のどこがすき?」
「ぶっへぉッ!!」
思いがけない質問に思わずお茶を噴き出してしまう。
臨也は仕方ないとばかりに所持していたハンカチでお茶で濡れてしまった僕の白衣を拭いながら、「そんなに驚かれるとは思ってなかったんだけど」とむすっとした表情で言われた。
「それはさておき、どうして急にそんなことを聞くんだい?君がそんな問いをしてくるなんて珍しいじゃないか」
「……なんとなく、かな。深い意味はないよ」
無表情に臨也は言った。
僕の座るソファには隣に臨也が居て、臨也の隣に僕が居る。けれども、その間の1人分のスペースがやけに遠く感じさせられた。臨也は何を思っているのか、膝を抱えながらただぼうっとどこかを眺めていた。
「──君は僕に何て言ってほしい?」
「え…?」
発したのは意地悪な言葉で、臨也は顔を上げて目をまるくし戸惑っている様子がわかりやすく伝わった。
「そ、れは…」
「君が言ってほしいこと、してほしいことをしてあげる」
「……」
「素直に言えばいい。臨也、君はただ──」
"愛されている"ことを、言葉で、体で、感じたいだけなのだろう?
20111227