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その夜、俺はドタチンの家へ訪れた。

「よう」
「…久しぶり、ドタチン」

ドタチンはいつもの優しい笑顔で俺を迎えてくれた。
本当は俺に何かがあったことを気付いているはずなのに。さりげない優しさが胸に染みる。
入れてもらったその部屋は、学生の時から変わっていなく、安心感が芽生える。

「俺がお前んち行ってもよかったのに」
「えへへ、ドタチンの家で飲みたかったの。ほら、俺もお酒持ってきた」

お土産にと持ってきたお酒が入った袋を差し出と、ドタチンは「おっありがとな」と袋を受け取る。
そのあとドタチンは冷蔵庫から持ってきたおつまみをテーブルに並べ、アルコールをさっそく口に含む。

「ドタチンと飲むの久しぶりだよねえ」
「ああ、そうだな。でもそのふざけたあだ名で呼ぶのはやめろ」
「えーやだぁ」

たわいもない話。だけどそれだけでだいぶ心が安らいだ。一瞬でも、シズちゃんを忘れられる。
──閉じ込めているだけ、かもしれないけれど、それでもよかった。

池袋にあるドタチンの家に来るには勇気がいった。シズちゃんの仕事はもう上がっているはずだけど、もし遭遇したら。
怖かった。どんな顔をしたらいいのかわからないのだ。

それでもドタチンの家へ来たのは、そんな自分が嫌だから。だからといって自分に意地を張ってどうする。

自身の捻くれさに呆れながら、今まであったこと全てを忘れられたらいいのに。
そんなことを思いながら俺はお酒を飲み干した。








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