あいたかった | ナノ







あいたかった





「ねえ」

くい。
雑誌を読む俺のシャツの裾を引っ張る黒髪の恋人。
ちら、と横目でその姿を見れば、上目遣いで物欲しそうな顔をしていて、まるで子供のようだ。
しかし、俺はその呼びかけを無視し、雑誌に視線を戻す。
すると、臨也は気に入らないとばかりに口を尖らせ、もう一度俺に「ねえってば」と呼びかける。
2度目にしてやっと俺も折れて、「どうした?」と顔を向ける。

「ね、シズちゃん……雑誌ばっかり見てないで、さ…?」

シズちゃん。臨也は再び俺の呼び名を口にすると、読んでいた雑誌を取り上げ、俺の上に跨がってきた。

「珍しいな。こんなに積極的になるなんて」
「100%シズちゃんのせいだろ。………久々に会ったのに」

臨也は俯き加減でぼそっと呟く。臨也と会ったのは、実際久しぶりだった。
しかし、忙しかったのは事実だが、時間が取れないといえば答えはNO。俺は、臨也からの連絡──もとい、誘いを待っていたのだ。だから、その分臨也から誘いのメールがきたときには嬉しかった。
不器用な『週末の日曜日、来て』と一言伝えるだけのメール。
だって、俺だって、俺だって会いたかった。会いたかったんだ。臨也。

「…っ…しずちゃん」

ちゅ。
臨也は自ら俺に唇を重ねた。軽く触れるだけのキス。思い返してみれば、初めて臨也の方からキスされたのではとも思う。

「……すき。離れないで」

いまにも泣き出しそうな臨也の髪を撫でる。すると、臨也は俺の胸に抱き着いて、もう一度「すき」と呟いた、







あいたかったよ
(まだ、貴方がたりない)






201128
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