ねえおれを満たして
つまらない。
何をしてても、誰かと話していてもつまらない。
そのため仕事をするにもやる気が起きず、ただただ時間が過ぎるのを待っていた。
はあ、と思わずため息を吐く。
これでも、暇な時間を持て余さないように努力はした。大好きだった人間観察もしたし、大トロも食べた。
なのに、満たされない。どうしても満たさないのだ。
例えるならば、心にすっぽりと穴が空いてしまったような虚無感。
──つまらないなあ。退屈だなあ。暇だなあ。
そればかりが頭の中を繰り返す。俺らしくないのはわかっている。人生は一度きりだ、楽しく過ごさなきゃ損だ。
「なのに、なぁ」
ぽつり、と誰も居ない部屋で呟いてみる。でも答えは無論返ってこない。
気付けば涙が頬を伝っていて、自分自身も驚いた。
なんで泣いているんだろう?
かなしいの?
こんな自分がいやなの?
わからない──それとも、
「…臨也、」
俺のよく知る声で、突然に呼ばれた自分名前。
開(あ)いたドアの前に立つその姿を見て、やっと気付いた。
「しずちゃ…」
そっか。
俺が足りなかったのは、
求めていたのは、
そう、
---
20111128