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片思い∞デイズ!!
・静雄も正臣も臨也にベタ惚れ





「シズちゃん」

後ろから、ひょこ、と覗き込むようにイスに座る静雄に声を掛ける。

「……ノミ蟲」
「ぼーっとしてたでしょ?ダメだよシャキッとしてなきゃ」

臨也はクスクスと手を口に添えて笑い、対して静雄は誰のせいだと言いたげに顔を歪ませる。

「うぜぇ……」
「あははは!言葉遣い悪いですよ静雄せんせ?」

臨也は見下しているつもりなのだろう。だが、静雄には逆効果であり、理性を保つだけで精一杯だった。

「なあ手前、今日は何時くらいに帰る?」
「?急用がなければ8時半には帰れると思うけど」
「なら!帰り一緒に──」

その時だ。
ぱたぱたぱたという駆け足の音が徐々に近付き、大きくなっていく。そして間もなくすると古びた職員室のドアが勢いよく開き、

「臨也さ――――ん!」

金髪の少年が臨也の元へ駆け、飛び付くように抱き着いた。紀田正臣だ。
静雄はタイミングを失ったとばかりに、悔しさを覚える。

「わっ紀田くん」
「臨也さん今日もプリティキュートですね!あと正臣って呼んで下さい」
「意味わからないよ」

正臣は臨也に顔を埋め、誰からでもわかるような好き好きオーラを醸しだしている。しかし臨也はそれを冗談のように軽く受け流すばかりで、実際に正臣は不満を抱いているのだが、当の本人の臨也は知るよしもない。

「今日も一段といい腰してますね!」
「あっ……ちょっ、ダメ。もうあんまり触らないでよ、くすぐったいんだから。お金とるよ?」
「お金払ったら触らせてくれます?」
「んーどうしよっかな」
「──おい」

その時、静雄が割り込み、臨也と正臣を引きはがす。臨也はきょとんと目をまるくし、状況を把握している正臣は不満そうにため息を漏らす。
静雄の額には血管が浮き出ていて、今にも暴れだしそうだ。

「静雄さん居たんですね」
「?シズちゃん、何怒ってるの」
「ああ!?わかれよ臨也手前もう少し警戒しろ!隙ありありじゃねーか!」
「はあ?何言ってんの?頭打ったんじゃない?あっごめんごめん元からバカだったねえ」
「…手前なァ…」

つらつらつらと馬鹿にするような言葉を並べていく臨也に、静雄はぐっと堪えて怒りを抑える。このまま怒りに任せてしまえば、臨也の思うツボだと判断したからである。

「ほら、正臣くんそろそろ授業始まっちゃうよ?」
「えーもうちょっといいでしょ」
「だーめ。そんなこと言うと評価下げちゃうからね」
「いいっすよ。留年したらそれだけアンタと居られるでしょ?俺、それだけ本気なんだ。わかってほしい……」
「………っ」

臨也の顔が熱くなる。不意に見せた正臣の真剣な顔に、臨也は胸をドキドキと高鳴らせていた。

「今度、テストでしょ?」
「…うん」
「もし満点とったら、俺にご褒美くれよ」
「え?」
「付き合ってとは言わないから。だから、そのかわり俺の言う事1つ聞いて」
「……どんな?」
「キス」
「…っ」
「してほしい。そしたら俺すっげー頑張れる」
「正臣く」
「約束!」

正臣は得意げな笑みで微笑み、臨也の手を取りぎゅっと握り締めると、すぐ職員室を出て行った。

「……臨也」

静雄が臨也を呼びかける。
臨也ははっと意識を取り戻したようで、「なに?」とぼんやりした頭で問い掛けた。

「──俺も」
「?」
「手前が好きだ」
「え…」
「紀田に先に言われちまって悔しいけど……手前のことが好きなのは変わんねぇ」

静雄は臨也の目を真っ直ぐに見てそう言った。静雄の気持ちには迷いはない。
臨也は戸惑いを隠せず、続けて愛の告白をされたという事実を信じられずにいた。お互い嫌い合っていると思っていた同僚に告白され、ただ懐いてくれているだけだと思っていた生徒に本気だと告げられたから。

「あ……」
「俺は、手前が俺のもんになってくれるならいつでも待つ」

──俺はもうアイツに片思いし続けて8年は経つ。
なのに、なのに今更あの子供に負けてたまるか。

静雄は固く意思を鎖し、こっそりギュ、と臨也の手を握る。
校内に、始まりのチャイムが鳴り響いた瞬間だった。









20110923
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