うわきしず2 | ナノ


I am seen‐2‐






昨夜は、一睡もできなかった。
頭から離れないのだ。

──俺以外の子にもあの優しい笑顔を見せているの?
──好きだって言葉は嘘だったの?
そんな嫉妬の混じったことばかりが頭を過ぎった。
しかし、思うだけで言葉にはできない。だって、俺が浮気を責めたらシズちゃんとの関係がおしまいだと思ったから。これはただの怖がりだ。
たぶん俺は、シズちゃんがどんな人でも、どんな性格をしてても好きになっていたと思う。
それほど好きで、好きで、大好きだから。それは今でも変わらない事実であることには間違いなかったのだ。
しかし、そのことが余計に俺を追い詰めて、ぎゅうぎゅうと胸が締め付けられているみたいに痛かった。
そこにシズちゃんからの愛がなくても、少しでも長く一緒に居たいから。
──本当に俺たちの関係が終ってしまうまで。
それは、ただ単に俺のわがままなのだろうけど。


「新羅ー」
「はいはい、紅茶のおかわりね」

新羅は仕方ないなと言うばかりに空になったカップを持ってキッチンへ向かう。
今俺は家を出て、新羅の家に来ている。新羅は事情を知っているからか、"やっぱり来たか"などと言いたげな顔をして何も言わずに迎えてくれた。
なんだかんだ言って、優しいやつである。

「静雄、どうしてる?」

新しい紅茶が入ったカップをテーブルに置き、シズちゃんのことを尋ねる。

「どうって……普通」
「……セルティから話は聞いた?」
「……うん。でもなぜか聞いた時、驚かなかった。池袋行くたびに女の子と話してたり、仕事ない日に朝早く出掛けたり、その度に深く考えないようにしてたからかな。ある意味、ほんとうのことが知れて良かったかもしれない」
「……そう」

新羅は一息置いてから俺の頭にぽん、と手を乗せる。

「でも君、すごく無理してるでしょ」
「え……?」
「それくらい僕にでもわかるさ」

俺の髪を撫でながら、新羅はにこりと微笑んだ。
──無理なんかしてないから大丈夫。
そう伝えようと口を開くが、言葉が喉が突っ掛かって喋ることができなかった。

「し、ん……」
「……君は悪くないから」
「──」

その一言で今まで張り詰めていた神経が緩んみ、俺は新羅の胸で泣いた。











20110815
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