‖I am seen.
・静雄×女性モブ描写あり。
「え、」
シズちゃんが複数と浮気をしている。
そう聞かされたのは、セルティからだった。
セルティは、『ごめん…。臨也のためだと思って言う』との前書きを付けて申し訳なさそうに真実を告げた。セルティが悪いわけではないのに。
「……ありがとね、教えてくれて…」
そう言うと、セルティはもう一度『すまない』と謝って、バイクに跨がり去っていった。
シズちゃんが──浮気。
シズちゃんを信じたいのに、疑ってしまう自分が確かにいて、そんな自分が嫌になる。
もしも本当浮気をしていたら?もしも俺のことを好きではなくなっていたら?もしも──。
だめだ。
このままじゃきっと悪い方向にばかり考えてしまうだけ。そう自身に何度も言い聞かせた。
「おかえり」
「、…ただいま」
平常心を装いながら、俺はシズちゃんに笑い掛ける。
セルティからあのことを聞いてから約数日。いつもなら嬉しいはずの"おかえり"という言葉も、どうしても胸がズキンズキンと痛んでしまい、息が苦しくなるほどだった。
「臨也、どうした?」
「…ううん!なんでもないよ!」
俺は両手を使って、大丈夫だということを表現する。するとシズちゃんも疑問げな顔をしながらも「そうか」と納得してくれて、俺はほっと一息ついた。
──あぶなかった。気を引き締めないとどうにかなってしまいそうで怖い。
きっと誰かに"泣いていいよ"と言われたら今にでも泣いてしまうだろう。
「臨也、今日飯いらないから」
「…え?」
「飯食べてきちまったんだ、悪いな…」
「ぁ…うん、わかった。仕事で疲れてるでしょ?はやく寝たほうがいいよ」
「そうだな、じゃあ先に風呂もわうわ」
シズちゃんはお風呂へ入りにリビングから去っていった。一人残された部屋はどこか寂しさが残像のように残る。
俺じゃだめ、なのかな。
俺じゃシズちゃんを満たしてあげられないのかな。
ああ、わかってる。
俺が、
シズちゃんに愛されていないってことくらい。
→
続く
20110806